美咲ちゃんが誰かに連れ去られた可能性については、とも子さんがこれまで山梨へ通い、現地を歩き、美咲ちゃんの目線に立った行動を踏まえた末にたどり着いたひとつの結論だった。発生直後にも同じ推測は頭に浮かんでいたが、「事件か事故かわからない」という理由で警察から口止めされていたため、公言はしなかった。
しかし発生から1年がたち、2年がたっても美咲ちゃんは現れず、報道の減少とともに世間の関心が薄まっているのも感じたため、公開を決めた。とも子さんが語る。
「今年3月ごろに文章を考え始めました。悩みながら時間をかけて書き、美咲を取り戻したい一心で公開しました」
そのホームページには、「似たような子を見かけた」という情報が毎月、数件〜10件程度寄せられる。その度に一喜一憂するというとも子さんは、どんな情報でもためらわずに伝えてほしいと呼び掛け、現在の心境をこう吐露する。
「美咲が私たちの目の前からいなくなって2年がたち、世の中では風化しているかもしれない。でも家族が忘れることはありません。美咲は私たちにとって絶対に必要な存在なので、戻ってくるまではあきらめない」
投げかけられる心ない言葉
情報や励ましのコメントが寄せられる一方で、発生以来続く誹謗中傷もいまだになくならない。前述の文章公開をインスタグラムでも告知したところ、同じアカウントからこんなコメントが立て続けに入った。
《家を売ってでも美咲ちゃん取り戻したいのですよね? なら家を売って懸賞金にすればいいのでは?》
《何故お母さんが批判されたり誹謗中傷されたりするのをご自身で考えてみて下さい》(原文ママ)
こうした嫌がらせや中傷に対し、とも子さんは法廷で今も闘っている。
自身のブログで1年以上にわたって小倉さん一家の中傷を続けた、無職の野上幸雄被告(70)=静岡県熱海市=が名誉毀損の罪に問われている裁判は、大詰めを迎えている。11月25日には千葉地裁で論告求刑公判が開かれ、検察は懲役1年6か月を求刑し、結審した。一方の弁護側は無罪を主張。証言台に立った全身黒ずくめの野上被告は最後に、
「今回は普通の事件じゃない。今まで誘拐は何度もあったけど、母親を追い掛けて云々ということはなかった。その理由は怪しくないから。自分の子どもがいなくなったら皆、泣きながら捜している。小倉とも子とは現地(の山梨)で会っているけど、捜しているのは1回も見たことがない」
などと支離滅裂な主張を続けた。公判終了後、とも子さんは嘆息まじりにこう語った。
「悲しんでいないみたいに言われたことがいちばん傷つきました。結局は、自分の犯した罪をわかっていないんだとがっかりしました。被告は『社会的正義のため』と誹謗中傷を正当化していますが、その先に美咲の帰りを待つ家族が苦しんでいることを理解してもらいたい」
判決は12月半ばに言い渡される予定だ。野上被告のほかにも誹謗中傷者は多数いて、とも子さんは、投稿者の情報開示を求める裁判を相次いで起こしている。
【小倉美咲ちゃんに関する情報提供は】
大月警察署 0554-22-0110 小倉美咲ちゃんHP misakiogura.com