展示のあり方を考え直す機会

「そもそも日本の動物園は入園料が安すぎます。例えば、上野動物園は一般600円ですが、海外では2000~3000円が標準です。そうして集められた入園料や寄付金を投じて動物たちを繁殖し、もとの生息地に戻して、個体数を増やそうとする取り組みも行われています」

 さまざまな問題を抱え、岐路に立たされている動物園。ただ、園側も手をこまねいているわけではない。繁殖のために、動物園や水族館同士で動物を無償で貸し借りする「ブリーディングローン」制度は全国に広がっている。また、動物たちの生態に合った飼育環境を整え、魅力を伝える展示を行うなど独自に工夫を凝らす動物園も多い。

「動物園や水族館は、エンターテイメントとしての存在だけでなく、人間と動物が共存するにはどうすべきか? という方法を考える場でもあります。文化資源として、動物園や水族館はまだまだ社会に必要です」(成島さん)

「人気動物がいなくなったとしても、動物園本来の目的である“動物の生態や能力や魅力を伝える”という役割は変わりません。(動物確保の困難という現在の状況は)人気動物に頼った展示のあり方を考え直す機会になると考えています」(平川動物公園)

(取材・文/高橋もも子)

※初出:週刊女性2021年12月21日号/Web版は「fumufumu news」掲載