吉田栄作の父親が語った、妻の死と息子の再婚

 お店に入り、吉田の父親に話を聞いた。

――息子さんが結婚されると聞きました。おめでとうございます!

「……大切な話だから、喪が明けるまで話したくはなかったんだよね」

 おめでたい話題にも関わらず、声をかけると暗い表情を浮かべた。喪中ということは、親戚に不幸があったのか。

「実は、今年の4月初めに妻が亡くなってね……」

 吉田の母は亡くなっていた。父は80代で少々耳が遠いものの、歩く際の足取りはしっかりしている。大変なときに訪れたことを詫び、改めてふたりのことについて聞いた。

「この前のお盆に、栄作が理名さんを連れてきたよ。彼女はすごくいい子で、ふたりとも仲よさそうだった。一緒に食事をして、お酒も飲みながらいろんな話をしたなあ……。栄作は泊まっていったけど、理名さんは気を遣ったのか、先にひとりで帰ったよ」

 3年前に母親に話を聞いた際は、内山とは「まだ会ったことがない」と話していたが、この数年で着々と将来に向けて準備を進めていたようだ。

――なぜ、今まで結婚されなかったのでしょうか?

「詳しい話は聞いてないけど、いい年齢のふたりだからいろいろあったんだろう。ここ1年は妻が亡くなるなど、バタバタしてたから、タイミングがなかったこともあると思うけどね。でも、結婚の話は前々から聞いていたから、1年間喪に服して来年には結婚すると思うよ」

 亡くなった妻の写真を記者に見せながら、ふたりのことを話す父はときおり寂しそうな目になる。

「このお店は、妻が経営していたんだけど、急に任されて大変だよ。服のことなんてこれっぽっちもわからないからね。でも死ぬ前に、あいつは“お店は残してほしい”と言ったから、俺もがんばりたい。最近、車に乗るのをやめて自転車を買ったんだけど、1日20分も走ってたら足の調子もよくなってこの通り元気なんだよ。酒も飯もうまいしな。早く栄作の孫の顔を見たいから、まだまだ死ねないよ(笑)」

 吉田のことを話す彼の口からは、自然と笑みがこぼれた。

 母の喪が明けた来年に結婚を考えていることについて、吉田の所属事務所に聞くと、

「プライベートなことなので本人に任せております」

 内山の所属事務所にも問い合わせたが、

「プライベートのことは本人に任せております」

 と双方否定はしなかった。

 吉田が大きな決断を下したのは、両親の思いを汲んだからなのかもしれない。