投資対象としての“ウイスキー”
海外も含めたウイスキー事情について株式会社クレア・ライフ・パートナーズにも話を聞いた。同社は、スコッチウイスキーを個人やバーなどに販売し、オリジナルボトルの制作サポート事業や資産の一部として活用する事業『ウイスキー・カスク・インベストメント』などを行う。
「海外では、ミレニアム世代と言われる'81年以降に生まれた人たちを含めた若い世代、今の経済を作っている方たちのなかで、ウイスキーを投資の選択肢に入れたいという人が増えているようです。
ウイスキーの本場であるスコットランドでは、一度閉鎖した蒸留所の再稼働が増えています」(ウイスキー・カスク・インベストメント担当者)
イギリスを本拠地とする『ナイトフランク社』によるレポートがある。それはレア物のウイスキーを含めた“高級品(宝石や時計、美術品など)”の、過去10年間の価値の変化をまとめたもの。
レポートによれば、投資対象となる希少なウイスキーの過去10年のリターン率(収益)の平均は540%。他の商品とは比較にならないほどの高リターンと発表されている。
ここまではすべて“ボトル”のウイスキーで起こった話。ウイスキー投資では、新たな形も生まれている。ウイスキーは基本的に“熟成”がなされる。それは木製の“樽”に入れることで行われる。ウイスキーの世界では、その熟成をするための樽を“カスク”と呼ぶ。
意外とお得? “樽”への投資
近年のボトルのウイスキーの高騰もあり、このカスクへの投資もはじまっているという。前出の『ウイスキー・カスク・インベストメント』はこちらの投資となる。
「ウイスキーの“カスク投資”とは、ウイスキーの樽つまりカスクを購入し、熟成によって価値が高まることで売却益を得る投資となります」(前出・ウイスキー・カスク・インベストメント担当者、以下同)
ウイスキーの樽は、その多くはウイスキーが詰められる前にバーボンやラム酒、ワイン、シェリー酒で使われた樽などが使用される。これらの樽を使ったウイスキーは、樽に前の酒の風味が残っているため、新樽を使ったものと比べ味や香りが大きく変わる。
そして当然樽に入れられた年月によっても変わってくる。つまり樽に入れたまま保管することによって、“より熟成されたウイスキー”となり、そこに“価値”が生まれる。
このようなウイスキーカスク(ウイスキーを詰めた樽)は投資商品として成長率が高く、また仮想通貨等のように乱高下することはなく安定して上昇しているという。
「投資としてのウイスキーカスクの成長率は、今だけ今年だけというものではなく、ここ数年安定して高いところも魅力の1つでしょう。メリットは保管のしやすさもあります。
カスクは英国歳入関税庁により認められた保税倉庫でカスク1つ1つ番号が割り当てられ、厳重に保管されます。カスク投資は保有期間が長くなるケースが多いですが、管理コストは非常に安い。
受け持つ管理会社によって多少の差はありますが、平均で年間45ポンドから60ポンド程度。日本円で1万円しないくらいです。そのため長期保有がしやすい。例えば不動産であれば、固定資産税や管理費などがかかってきますが、それらに比べて保有にコストがかかりません。
また、スコッチウイスキーの場合は、カスクには個別に登録者番号のようなものが振られます。その登録者番号を日本でいうところの国税庁のような機関である英国歳入関税庁が番号を管理します。それによって資産としてきちんと認められたものになります。
名義変更なども可能で、子どものために購入し、数十年後に名義変更して、子どもに贈与、相続させるという使い方もできます」
例を出すと、『マッカラン』の1988年物のカスクは2016年から2020年の4年間保有で、年平均59.6%の上昇。利益率は238.4%となった。
樽となると、当然その“量”は多くなる。つまり買うにしてもボトルにすれば安いようなウイスキーでも値段が高くなるが……。
「30万〜40万円のカスクもあります。もちろんそういったものは樽に詰めたてのものになります。投資商品としては価格が安いので買いやすく、今後どんどん人気が出てくるのではないかと思います。
さらには、ご購入されたカスクをボトリングすることもできるので、オリジナルウイスキーのボトルの製作や、Barやレストランなどで販売したい、というお客様も多くいらっしゃいます」
世界で高騰を続けるウイスキー。あなたも夢を買ってみますか?