“しょこたん”なんて呼び方はしない

「ドアが開いていてもノックして入室するのは礼儀ですよ。前副町長の同席については、新井氏が早めに来て前副町長に会ってから町長室に来たのか、途中まで前副町長が同席していたのか覚えていませんが、前副町長あてに訪ねてきたことがわかっています。それと、私が言ったのは“しょこたん”なんて呼び方はしないということ。ほかの町議も愛称で呼んでいるように、公式な場でなければ人間関係を円滑にするため“しょうこちゃん”と呼ぶことはありましたよ」

 音声データには、性暴力を受けている場面の録音はない。新井元町議によると、町長に隠し録りがバレたと思ってその前に電源を切ってしまったからだという。

 性被害が事実とすれば同町として由々しき問題であり、ウソだとしても同じ。しかし町議会は2年前の告発当初、現職議員だった新井氏に対し、個人的な性の話題を議会に持ち込んで品位を傷つけたなどとして懲罰動議にかけ除名。県の判断で復職すると、昨年12月には新井氏をリコール(解職請求)する住民投票が実施され、町議の運動もあって賛成2542票、反対208票という大差で失職した。定数12(欠員2)の町議会で新井氏側に立つ議員はひとりしかいない。

 セクハラ被害者の背中を押す「#MeToo」運動が世界的に広がっていたこともあり、一部の有識者や女性団体などがこの騒動の経緯を問題視。新井元町議の支援者らが同町に駆けつけ、議会傍聴や街頭活動するなど町長との対立が激化していた。

 町長選はどのような闘いになるのか。

 新井元町議は、

「私の性被害は町政と直接関係がないため争点にしたくありません。立場の弱い町民の声をしっかりと聞く政治を目指し、弱者に寄り添う町づくりや観光政策を訴えていきます」

 ときっぱり。

 黒岩町長はこう話す。

「もっと観光地として盛り上げるためにも残された仕事をやらなければいけない。性暴力の有無をめぐる争いはマニフェストに書く事柄ではありませんが、新井氏から何か言われた場合はしっかり反論します」

 年明けから街頭で激しい論戦が展開されそうな町長選。唄に合わせ約180センチの板で熱湯をもんで冷ます“湯もみ”は草津温泉の名物として知られるが、両者の摩擦熱は増すばかりで湯もみも効きそうにない。