「僕はテレビには新陳代謝が必要で、世代交代は当然と唱えていますが、シニアの視聴者も絶対大事にしなきゃいけないと思うんですね。ドラマにおいても中高年層が“ああ、やっぱり見ていて食い足りるドラマだな”“見ごたえがあるな”という作品を、テレ朝は東映とタッグを組むことによって多く生み出していると思います」
また『報道ステーション』の存在も大きい、と影山教授。
「22時には必ずニュースをやっているという安心感がありますよね。“あれ? 先週はこの時間にあの番組をやっていたのに、今週はやっていない”というのは、テレビとしてはダメなんです。そして、『報道ステーション』の前には熟練のドラマを楽しむというスタイルを定着させたわけです。逆を言えば、22時スタートのドラマをテレ朝は作れないわけですが、それを逆手に取って、見事なドラマ枠を作り上げてきたわけですよね」
ヤクザ映画ばかりだった東映
では東映にとって、テレ朝とタッグを組むメリットは? そもそも東映は、東宝、松竹とともに日本3大映画会社のひとつ。
「年間売り上げでいうと、東宝は1919億円。東映は1076億円とダブルスコアです。所有スクリーン数も、東宝系の『TOHOシネマズ』が約660スクリーン(共同経営含む)に対し、東映は218スクリーン(会社概要より)。また『TOHOシネマズ』は交通の便の良い場所にあることが多いですよね。阪急阪神東宝グループに属する東宝は、優良な不動産を持つことでも知られています。そのあたりも売り上げの差に反映されていると思います」
若い男女の恋愛モノなど派手な作品の多い東宝、『男はつらいよ』などに代表される人情味あふれる作品に強い松竹に対し、東映はヤクザ作品に定評が。
「昨年は『孤狼の血 LEVEL2』(主演・松坂桃李)がヒットしましたが、まさしく東映の真骨頂。しかしながら、時代と社会性の面からヤクザ映画ばかりを作っているわけにはいかない。そして、映画ビジネスはどうしてもギャンブル性が高く、リスクの多くを映画会社が抱えている側面があります。そんな東映にとってテレビというメディアの安定性が何よりも魅力なんです。毎週、必ず流すことができる。そしてテレ朝との長い歴史において水曜21時、木曜20時というしっかりとした枠があり、そこにスポンサーがつくわけですから。会社として日銭がちゃんと稼げるわけです」
その中でヒットドラマが生まれれば、劇場版の配給も当然できる。
「『相棒』はこれまでに劇場版が4作公開されていますよね。そして昨年は『科捜研の女』も初の劇場版がヒットしました。もちろん配給はすべて東映です」