“あなたは世界にたった一人しかいない”
今回の曲作りも、困っている人たちに何かしてあげられることはないかという思いが根底にはある。
「最近は心に病をもっている人が多く、ストレスという言葉では解決できなくなってきています。さらにコロナ禍で行動に制約がかかり、心が疲れている人がたくさんいます。『世界の中で』という曲では、“あなたは世界にたった一人しかいない”というメッセージを伝えています。
せっかく生まれてきたのだから、堂々と生きたほうがいい。今日はつらくても、明日にはいいことがあるかもしれない。天気と同じで、雨や風の日もあれば、晴れる日があるのが人生だと思って過ごしてほしいです。
『ありがとうの詩』は、ありがとうと素直に伝えることのあたたかさや幸福感を思い出してもらえるきっかけになってほしい。これらの歌がみなさんの心の支えになることを願っています」
歌を若い人にも届けるため、日ごろから親交が深いEXILE ATSUSHIさんにも楽曲制作をもちかけた。そしてATSUSHIさんも菜穂子さんの詩に感動して、楽曲を制作することに。菜穂子さんを訪問した際は、ATSUSHIさんも一緒にうかがい、2人がそれぞれの楽曲をプレゼントした。
「僕たちの曲を聴いた菜穂ちゃんは、あまり身体が動かせないのに、両手を上げて喜んでくれました。握手した手をなかなか離さず、彼女の強い思いを感じることができました。
菜穂ちゃんは今27歳で、自立を望んでいます。香取慎吾さんの大ファンということなので、『自立を果たしたら、自分のお金でコンサートに足を運び、香取慎吾さんにも会いにいったらいいよ』と話をしました」
今後も菜穂子さんとの交流が続いていくという杉さん。『世界の中で/ありがとうの詩』を聴いて、純なふたりからの温かな希望のメッセージを受け取ってほしい。
『世界の中で/ありがとうの詩(うた)』
脳性まひの詩人・堀江菜穂子さんの詩集『いきていてこそ』の2編を原詩にして杉さんが作詞、『天城越え』などで知られる弦哲也さんが作曲。編曲はNHKドラマ『大地の子』などで知られる渡辺俊幸さんが担当。
《取材・文/紀和静 撮影/高梨俊浩》