そんな危惧を抱く羽生を支えたのが“精神的な柱”だと語る父の存在だった。

「結弦くんのお父さんは、仙台市の中学校で校長をしています。“スケートだけじゃなく勉強もしっかりやらないとダメ”と、常日ごろ言っていた厳格な方で、2020年度には教育に関する論文が県で入選したこともあります。ただ、スケートについてはお母さんがいちばん近くで支えていることもあり、お父さんが口出しをするようなことはありません。練習の送り迎えなどはしますが、一歩下がって見守っています」(羽生家の知人)

 前出の春日さんも続ける。

結弦くんのおじいさんは、律義で面倒見のいい親分肌でした。なので、結弦くんのお父さんもそれを受け継いでいる部分があるかもしれませんね」

校長の父親が語った「チャレンジ」

 そんな父が勤める中学校では、『全日本選手権』開催中に2学期の終業式が行われた。

「終業式では、羽生校長から式辞が述べられました。“年齢を重ねると時間の体感が短くなる。3年生は受験を目前に控えて焦る気持ちになると思うが、時間は万人に等しく流れるので今を大切にして、冬休みはいろいろなことにチャレンジし、自分を磨く期間にしてほしい”という内容でした」(中学校の保護者)

 この思いは、羽生にも届いたに違いない。

羽生選手は、悩んだときには家族に相談をするといいます。それがきっかけで、気持ちが好転していくことも多いそう。北京五輪に向けて、4回転半の成功と3連覇のプレッシャーが彼にかかりますが、お父さんの“金言”を胸に、北京五輪に向けて演技を磨き続けたことでしょう」(スケート連盟関係者)

 “今がいちばんうまい”と自負を持って挑む羽生の集大成。その演技で、北京から世界中を魅了してほしい!

渡部絵美 ◎元フィギュアスケート選手。日本代表として世界選手権などで活躍。2度の五輪出場経験があり、'80年のレークプラシッド五輪では6位入賞