重症化しても打つ手なしの現状
子どものコロナワクチン接種の賛否に「いいえ」と答えた人の中には、「子どもは重症化しないから」と回答した人が目につく。「重症化しない小児に、重症化予防が主な目的のワクチンを打つ意義がどこまであるのか」(神奈川県の男性=37)という声も聞こえてくる。
一方、「重症化しないといっても、海外では実際に亡くなったケースもある。心配だから自分の子には接種させたい」(埼玉県の女性=46)と回答する人もいて、判断に迷うところだ。
「重症化しにくい子どもへの接種を急ぐより、高齢者や基礎疾患がある人のブースター接種に力を注いだほうがいいという意見もあります。ただ、一定割合で重症化する子どももいます。
特に気をつけたいのは基礎疾患がある場合。ぜんそくや糖尿病、がんの治療や臓器移植を受けたケースなどです。肥満も基礎疾患の1つ。肥満度を判定する『ボディマス指数』(BMI)で30以上が肥満と定義されています。身長から100を引き、それに17を足した数字がBMI30の体重。それ以上あるという人は要注意です」
村上さんによれば、基礎疾患がある人は、体内で常に炎症が起きている状態だという。そこへコロナ感染すると免疫がウイルスを撃退しようと反応、さらなる炎症を引き起こし重症化してしまう。
「昨年から重症化を防ぐコロナ治療薬『モルヌピラビル』が国内で使用され始めましたが、対象年齢は18歳以上。つまり基礎疾患のある18歳未満は重症化予防に関して、現状では打つ手がないのです」
5~11歳のコロナワクチン接種にあたり日本小児科学会は提言を発表、「今後、感染者数が増えると中等症や重症が増えることが予想される」として、ワクチン接種には意義があると話した。
村上さんが強調して言う。
「不安に思う親御さんがいる以上、絶対に打つべきとは言えません。それでも基礎疾患のある子どもや、重症化リスクのある家族が同居している場合は、私は待ったなしでワクチンを接種したほうがいいと思います。
実は先日、ファイザーがオミクロン株専用ワクチンの臨床試験を開始しました。早ければ夏前には登場するので、それを待つという手もある。もちろん、接種できるようになるまで感染予防を徹底することが必要です」
アンケートの中には、「未接種のままでは修学旅行に行けないなど、子どもの行動が制限されそうだから接種させます」(神奈川県の女性=54)という回答もあった。子どものワクチン接種をめぐっては医学的な側面だけではとらえきれない問題もある。
「保育園や幼稚園で、クラスターの発生や休園が相次いでいます。子ども同士で触れ合って、遊んで、人間関係を通じて学ぶことが目的の場所ですから、リモートというわけにはいきません。大人も休園に合わせて仕事を休まざるをえず、収入が減る人もいるでしょう。
人格が形成される大事な時期に、感染拡大のため子どもたちの行動範囲が狭められてしまう弊害は大きい。重症化はしなくてもこの観点からワクチン接種をするという考え方もあります。子どものワクチン接種をめぐっては、そうした社会的影響も含めて考えていく必要があると思います」(村上さん)