パフォーマンスやアピールだけの政治家に気をつけよう
このような非常時こそ強いリーダーシップを発揮すべき教育行政は、実はお粗末な状況にあります。文部科学大臣は末松信介参議院議員で、これまで教育行政の重職に携わった経験はほとんどありません。昨年10月岸田総理から文科相としての入閣打診を受けた際は「私は末松信介です。文部科学大臣ですか」と聞き返したそうです。初閣議後の記者会見でも「まずは現状課題をしっかり把握していきたい」と基礎知識の乏しさをほのめかしました。
また、事務方のトップである義本博司事務次官は、高等教育局長時代に高額接待による懲戒処分を受けた経歴があり、その負い目でリーダーシップを発揮できる状況ではありません。何とそれまでの3人の事務次官のうち、2人が不祥事で辞任しており、文部科学事務次官の権威が失墜しています。
つまるところ、教育行政はエアポケットの状態にあり、その悪いタイミングで第6波が襲来してしまった訳です。
その中央政界に引き換え、具体的な提言で存在感を増しているのが全国知事会、とりわけ実力派の知事達です。
1月28日のオンライン会議後、全国知事会は『爆発的感染拡大を抑え 「暮らし」・「健康」を守るための緊急提言』として34箇条の政府への要望をまとめました。また、平井伸治全国知事会会長(鳥取県知事)は「飲食店だけの今の対策は間違い。本当の感染現場は学校や保育所だ。政府や専門家は十分認識していない。学校の休業は、知事が効果的な対応が選択できるようにする」と、的確な発言をしました。
また、2月1日の岸田総理とのオンライン会談で平井知事は感染対策の重点を従来の飲食店から学校や保育所に転換するよう求めました。それも決定打となり、対策の基幹である政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が実に2か月半振りに開かれたのです。
マスコミや議員出身で、“発信力”つまりマスコミアピールに長けた知事が思い浮かびますが、それは第5波までの話です。手洗いマスクや人流抑制を、どれだけアピールするかは、昨年までのキモでした。しかし、ダイヤモンドプリンセス号の事件から丸2年経った今、全体像を見据えた実効性のある政策こそ大事であるのは国民は身にしみて理解しています。
国政か地方政治かを問わず、この国民的危機で力を発揮できない政治家が必要でしょうか。仕事をしない政治家は論外ですが、マスコミアピールでやったように誤魔化している者には気をつけなければいけません。それは首長だろうと一議員だろうと、同じです。見抜く目がないと、すぐさま我が身に跳ね返る時代だからこそ、堅実な「本物」を見極めたいものです。