ガソリン税、石油税に消費税がかかる「二重課税」も問題

 さらに荻原さんが怒りを隠しきれないのが「二重課税問題」だ。二重課税とは、同じ物やサービスに複数の税金がかかっていること。今値上がりが問題視されているガソリンも、この二重課税の対象だ。まずガソリンの原価にガソリン税と石油税がかかる。そしてこの2つの税金を含めたガソリンの本体価格に、消費税がかかっている(下図)。つまり、ガソリン税や石油税にも消費税がかかっているのだ。税金に税金がかかっているという、異常事態が起きている。

「この問題は消費税が導入されたときから起こっています。でも政府はなかなか調整しようとしない。国民が声を上げないのをいいことに……。これはおかしいだろうと言いたくもなります」

 なぜこのような理不尽なことが横行してしまうのだろうか。

「今に始まったことではありません。しかしここにきて、経済が成長していない状態で国民の負担ばかりが増えているため、多くの人の目が向けられるようになったのです」

 1980年代のバブル期も増税や物価上昇が続いたが、経済成長が伴っていたのであまり問題視されなかった。

「2つ目の理由は、自民党税制調査会(党税調)の権威が低下したこと。以前は、税金の使途も含めて党税調がにらみを利かせていました。ですから、脈絡もなく勝手に増税することができなかった。けれど、今では党税調の圧力がほとんどない状態です」

 税金の使い方は、毎年会計検査院が指摘しており、2020年度の「ムダ使い」は2108億円に上る。しかしコロナ禍のため通常の10%程度しか調査できていない。調査の目も届かない今、現在は政府が税金を自由に集めて使える状態になっているといえる。

 逆に、税金を有効活用するためには、国はどこにお金を使ったらいいのだろうか。

教育への投資なくして日本の経済成長はない

「教育や研究への投資が必要です。日本は大学の民営化を始めてから学力低下が叫ばれるようになりました。高等教育にもっと投資すべき。今のままでは、日本はもうノーベル賞を取れないと言われていますよ

 日本でコロナワクチンが開発されなかった背景には、こうした教育・研究機関への投資不足が影響している、と荻原さん。また農業への投資も重要だという。

「これからは食糧が不足する時代。すでに欧米諸国は自国での食糧生産を強化していますが、日本は逆に2018年まで減反政策をしていました。一刻も早く政策を見直すべき」

おかしいと思ったら声を上げるのが第一歩

 今後どうやって税金のムダ使いを防いだらいいのか。

「まずは声を上げること。今はSNSなどで個人が声を上げられる時代です。おかしいと思ったら積極的に発言を。あとは選挙に行くことです」

 選挙での投票率は年々下がり「誰に投票したらいいのかわからない」という声も。

「最近は候補者の政策がインターネットで閲覧できるようになりました。自分の納めた税金をムダにしないためにも投票はしていかないと」

 あげつらったらキリがない、と荻原さんが嘆く税金のムダ使い。それを防ぐには、おのおのが声を上げるしかない。

教えてくれた人は……荻原博子(おぎわら ひろこ)さん
●1954年生まれ。経済事務所勤務後、1982年よりフリーの経済ジャーナリストとして新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌などの連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。著書多数。

取材・文/ayumi