ひと昔前、ガムといえば「板ガム」が主だったが、現在、スーパーやコンビニの売り場で見かけるのはほとんどが「粒ガム」。SNSを見ても、久しぶりに手に取った「板ガム」を懐かしむ人たちの声も多い。いつから「板ガム」→「粒ガム」がメインとなったのだろうか。調べてみると、これほどまで「粒ガム」が主流になっても「板ガム」が消えずに支持される理由、そして長い歴史を持つ「板ガム」だからこその“深イイ話”が見えてきてーー。
粒ガム流行の裏に「女性の社会進出」
「ブランド担当者として、よくSNSをチェックしているのですが、多く見かけるのが、“板ガムを復活してほしい”とのお声。我々からしたら『まだ売ってますよ!』と声を大にして言いたいのですが(笑)。『ブルーベリーガム』『梅ガム』をラムネ化して販売した当初も、“板ガムでも復活して欲しい!”という声を多くお見かけしたのですが、ずっと板ガムは売っているんです。もう板ガムは売っていないものと思われている方も多いようです」
そう話してくれたのは、株式会社ロッテ ブランド戦略部の毛利彰太さん。
思えば、ガム売り場はいつからか「板ガム」→「粒ガム」へと変わっていった。粒ガムしか置いていない、そんなお店も少なくない。いまでは主要となった「粒ガム」だが、ロッテで初めて発売されたのは1994年のこと。
「1994年2月に、『ブルーベリーガム シュガーレス』、『フラボノガム シュガーレス』がロッテ初の粒ガムとして発売されました。当時は正直、すごく売れたとか、大きな反響があったというわけではありませんでした。その流れが変わったのは約3年後。1997年に『キシリトール』が粒ガム形態で発売されてから、主流が粒ガムへと変わっていったんです」
実は「粒ガム」が流行った裏側には、こんな時代背景も影響していたとか。
「ちょうどそのころは、女性の社会進出が進んだ時代でした。人前で大きな口を開けてガムを食べることに抵抗を持つ女性もいたことから、スッと口の中に運ぶことができる粒ガムが支持されたと言われています」
次第に世間に浸透していった「粒ガム」は現在、ガムの売り上げ全体の大部分を占めているという。一方で、追いやられているように見える「板ガム」だが、“存続の危機”なんてことはこれまでになかったのだろうか。
「これまでそういう話はなかったですね。ただ、今は板ガム一本でやっている『グリーンガム』とかも、一時は粒ガムに浮気したこともありました(笑)。確かに粒ガムが多くの売り上げを占めているのですが、一定数以上、板ガムには根強いファンの方がいるのも事実。特に板ガムに慣れ親しんでいる世代の方の中には、“やっぱり板ガムじゃないと嫌だ”という方もいるので、これからも完全に板ガムがなくなるということはありません」
客層は商品によって異なるそうだが、全体の傾向としては、他のガムと比べて50〜60歳代が多いという。板ガムの魅力について、毛利さんはこう話す。
「板ガムの噛み心地って、粒ガムにはない魅力があるんです。弊社はガムの噛み心地にもすごくこだわっていて、板ガムには“噛み心地”の決め手となる『ガムベース』という原料が粒ガムより多く配合されています。ファンの方の中には、その板ガム特有の噛み心地を支持してくださっている方も数多くいらっしゃいます。
また粒ガムのようなコーティングが施されていないため、パッケージを開けた瞬間に、ガムから広がる豊かなか香りを楽しむことができます」
確かに、包み紙を開けた瞬間の香りは、板ガムならでは。多くの商品が「粒ガム化」される中で、板ガム一本で勝負を続ける商品もあるが、それには、香りや噛みごこちなど、板ガムにしか出せない魅力との相性も関係しているようだ。