定年後も枯れた演技はしたくない
役者としての原点は、中学時代に映画館で見た『ロッキー・ホラー・ショー』。あれから数十年の時を経て、今では自身の代表作のひとつとして知られるように。今春には5年ぶりに主役のフランク・フルターを演じ、話題を集めた。ここでも座長として面倒見のよさを発揮している。
「コメディーだからセリフのどこがお客さんに届けば笑いがくるかという計算が必要になってくるんです。ただキャストの中にはこういう芝居に慣れていない人も多いから、普通にセリフをしゃべってもダメなんだと教えてあげる。
例えばツッコミの場合は出だしを強く発しなさいと。“どんだけ!”なら“D”を強調しろと教えるんです。彼らもそれで“ウケました!”なんて喜んでいて、われながらいい先輩だと思います(笑)」
黒ガーター&ストッキングの妖艶な姿で圧倒的なカリスマ性を見せつけてきたフランク・フルターだが、演じるのはこれがラストだという。
「最終的には日本版『ロッキー・ホラー・ショー』みたいなミュージカルをやってみたいという気持ちがあって。ロッキーやジャネットではなく、カズオやヤヨイが出てくるような(笑)。
それでいてスピーディーで、カッコいい音楽があって、意味はわからないけど楽しかったと思えるような作品ができたらなと。そういうミュージカルがつくりたくてずっと劇団☆新感線にいますが、なかなか実現には至りませんね。だからといって『ロッキー・ホラー・ショー』をやっていたら本末転倒なんだけど(笑)」
かねてから「60歳で役者定年」を公言してきた。現在56歳で、残すところあと4年。定年延長が望まれるが……。
「劇団☆新感線の舞台は体力勝負。3時間超えは当たり前で、しかも落ち着いたシーンが一切ない。コメディーのセリフは出だしが大切で、どんどん上からかぶせていくからどんどんスピードが速くなる。
その分体力が消耗していくわけです。あれだけのナンバーを歌って踊ってズッコケてツッコんで、というのはもういいかげんキツいですよ。メインでガツガツやる役は、そろそろフェードアウトしていけたらと。そうなると、せいぜい60歳までかなと思っていて……」
では古田が描く“定年後”にはどんな役に取り組むのか?
「セカンドとかサードの役、お爺さん役ならイケるかななんて考えてもみるけれど。でも枯れた演技はしたくない。渋いお爺さんというのも喜劇人としてはアリだけど、できれば伊東四朗さんみたいになりたくて。
伊東さんはいまだに楽屋に来て“僕にも仕事ちょうだいよ”なんて普通にふざけますから。ああいうチャーミングな先輩になりたい。いつまでも“ニン!”なんてやっていたいですよね(笑)」