日本の家賃の高さも彼らに大きな打撃を与えている。
家賃の負担を「とても苦しい」「苦しい」と答えた人は8割越え。すでに家賃を滞納している人は4割にのぼる。中には、部屋を貸してくれる代わりに性的関係を強いられる女性の例も複数あり、まるで奴隷のような日々を強いられていることがわかる。同じ仮放免者の中でも、女性はさらに弱い立場に置かれていることがわかり、言葉を失った。
「なら国に帰れ」と言う前に読んでほしい
そんな苦境に喘ぐくらいなら、国に帰ればいいじゃないかと言うだろう。おそらく、この記事に対しても、日本に住む外国籍の人々を快く思わない人たちがワラワラと集まってくるはずだ。そんな人たちには特に、タイトルや見出しだけに反応するのではなく、最後まで読んでほしい。排斥(はいせき)は自分たちにとって損だということを知ってほしい。
仮放免者たちは、そんな苦境にあっても、自国に帰れないさまざまな事情を抱えた人たちだ。そもそも、考えればわかるのではないだろうか。昨年3月、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんのように入管施設で亡くなる人はあとを絶たず、仮放免になっても暮らせないようにされている。そんな拷問のようなことをされながらも、なぜ帰らないのかを。
帰れないからでしょうが!
日本に残っても施設収容や仮放免も地獄、帰国したら速攻で殺されるかもしれない更なる地獄が待っている。殺害されるほどの危険はなくても、自国で生きていけないことがわかっている場合、やはり帰れないのだ。
前述のように、日本の難民認定率は1%未満。難民条約に加盟していてこの有様では、条約に加盟しているのはポーズに過ぎないということになる。やっているアピールはしていても、実際は追い返すための嫌がらせにあの手この手を尽くす挙句に、目の前で死なせたりする。とても恥じることであって、あってはならないことだ。
「外国人に俺たちの仕事が奪われる」は本当か?
筆者は普段、生活困窮者支援の活動をしている。その関係で国籍問わず、生活に困ってしまった方々に出会い、そこで思わず顔を曇らせてしまう主張を聞くことがある。
「仕事を探しているが全然ない。外国人が俺たちの仕事を奪っているんだ!」
聞けばその人が探していたのは駅前の自転車管理の仕事だった。筆者は駅前の自転車管理の仕事に外国籍の方が就いているのを見たことがない。
「その仕事を外国人が取ったんですか?」と聞くと、男性は口ごもる。
「あなたのお仕事のライバルは外国人ではなく、低年金でアルバイトをしないと生計が成り立たない日本人の高齢者ではないでしょうか」と諭さずにはいられなかった。
男性の後ろには、病を抱えながら医療にかかれず、家賃も払えず、
生存を椅子取りゲームにせず、ともに生きる道を模索することはできないのだろうか?
仮放免者の生活と命を存続させるために必要なこと
北関東医療相談会の長澤正氏と大澤優真氏ら支援者が国に求めるのは以下である。
・就労を認めてください ・国民健康保険など医療保険の加入を認めてください ・無料定額診療事業を行う医療機関への支援をしてください ・生活保護法を適用してください
仮放免者に向けたアンケート調査の結果、回答者の87%が20~50代の働ける年齢層だということがわかったため、まずは就労許可と医療保険への加入が特に急務だ。筆者が所属する「つくろい東京ファンド」のシェルターにも5名の仮放免者が滞在しているが、彼らは異口同音に「働きたい」という。
記者会見にはアフリカ出身で難民申請中の男性B氏とミャンマーのロヒンギャ難民のミョーチョーチョ氏が参加していた。
B氏は難民申請を却下され続けていて、現在、三度目の申請をし「アフリカ、戦争のところばかり。一週間で50人とか死んじゃう。ほんとに帰れない」と語った。
ミョーチョーチョー氏は2月6日にバングラディシュに避難していた父親を病気で亡くしたばかり。自分が仮放免で働けず、父親に治療費も送ることができずに死なせてしまったことを悔いて、涙ながらに訴えた。
そして二人とも、仕事をしたいと訴える。人に頼って生きるのは心苦しい。仕事をして、自分の力で生活したい、家族の面倒をみたい。誰かの役にも立ちたい、そして病気になったら病院にも行きたいと。
これは、わがままだろうか?