“番宣番組”と“取り立て役”
「大河ドラマや朝ドラといったNHKのドラマは、舞台になっている地域のみなさんの協力が不可欠です。収録の合間の休憩場所やちょっとした食事を提供してもらったり、お祭りのシーンなどにエキストラとして出演してもらうこともあります。
多くの人に気持ちよく協力してもらうためには、地域全体がドラマで盛り上がる必要がありますが、その際に役立つのが『家族に乾杯』なんです」
『家族に乾杯』は笑福亭鶴瓶とゲストが各地を訪れ、地元の人たちと触れ合いながら旅をしていく番組。大河ドラマや朝ドラの出演者が、ゲストとして鶴瓶と一緒に自分の番組のロケ地を旅することも多い。人気者の鶴瓶とドラマの出演者が町にくれば大概は盛り上がり、ドラマの人気も増すことになる。
番宣として活用されるNHKの番組は、近藤春菜と足立梨花がMCをしている『土曜スタジオパーク』などもあるが、ドラマの舞台でロケをしてくれる番組は『家族に乾杯』のほかにはない。大河ドラマや朝ドラの成功にとっても大事な番組なのだ。
『家族に乾杯』が打ち切りを免れた3つめの理由。それは、受信料取り立て役としての存在だ。
「これは以前、局内でまことしやかに噂されていたことなのですが、『家族に乾杯』のロケはNHK受信料の未払い世帯が多い地域を選んで行っているというのです」
NHKにとって受信料は命綱。現在の受信料支払い率は80%以上だが、近年で最低だったのは2005年の69%。3割以上の世帯が支払いを拒否していたことになる。
実はその前年の2004年に『紅白歌合戦』の担当プロデューサーが制作費を不正使用していたことが週刊誌の報道によって発覚。しかも、NHK内部ではその不正に3年前から気づいていたのに放置していた。
その後も、岡山放送局の放送部長が架空の経費を着服していたりと、ずさんな体質が次々に明らかになった。
さらに、独裁的な言動で「エビジョンイル」と揶揄された当時の海老沢勝二会長の不遜な態度も世間の反感を煽り、2004年から受信料の不払いが続発。ついに2005年に支払い率が7割を切ってしまった。NHKにとっては死活問題である。