「“今期いちばん面白かった”という人も中にはいて。昼ドラテイストで、毎回誰かが怪しいというパターン。ただ、この作品のテイストに主演の波瑠さんの品のよさ、林遣都さんの演技の上手さがかみ合ってないように感じられて。役者さん目当てで見ると“なんだこれ?”となる。
テンポだけはよくて、ディティールは描かれていないことも多く、展開がとにかく唐突。“なんでそうなった?”だらけ。もちろん“ノリで楽しむ作品なのに何言ってるの?”と言われる可能性はありますが」
田幸さんは、コロナ禍になってから雑なミステリードラマが増えたと指摘。
残念なBLシーン
「考察する視聴者の“裏をかいておけばいい”という作りのドラマが多いように思います。4月からもいくつかミステリードラマが始まりますが、心配ですね」
一方、吉田さんは『ファイトソング』(火曜22時~TBS系、放送終了)を挙げた。夢に破れた花枝(清原果耶)と落ちぶれたミュージシャン(間宮祥太朗)と幼馴染(菊池風磨)という3人によるラブコメディだが、
「ヒロイン、恋のお相手、さらにかませ犬……というお決まりの三角関係を楽しむ枠ではあるんですが、ちょっと要素を盛り込みすぎじゃないですか? 花枝は児童養護施設育ち、元アスリート、耳が聞こえなくなる(聴神経腫瘍)……。ミュージシャンだけど女性に免疫がない設定なんかもウソ臭い」
この作品で、清原果耶は民放連ドラ初主演となったが、
「清原さんは好きな女優ではあるんですが、今回の役は彼女がやるべきだったのかという疑問はありますね。もちろん、影のある役ばかりやってるわけにもいかないのはわかるんですが……。脚本は岡田惠和さんのオリジナルなんですが、とにかく話が先に進まない。ハマる要素がまったくなく、“最終回で恋の行方だけ確認しておけばいいか”くらいの感じでしたね」
同じく視聴意欲を奪い、脱落をいざなう作品としては『ユーチューバーに娘はやらん!』(月曜23時6分~テレビ東京系)と『ケイ×ヤク-あぶない相棒-』(木曜23時59分~日本テレビ系、放送終了)も。『ユーチューバーに娘はやらん!』は結婚式当日にドタキャンされた千紗(佐々木希)が新たな恋の相手として、ユーチューバー(戸塚純貴)とテレビ局員(金子ノブアキ)の間で揺れるラブコメディ。
「バラエティー的な要素が多い見せ方なんですよね。“コメディだから”ということでヒロインの女心などは割愛。終始わちゃわちゃしていて、コントの寄せ集めのよう。父親に遠藤憲一さん、母親に斉藤由貴さん。こんないい俳優を呼んでおきながら、寒いコントをさせているわけですよ。散漫すぎて、私はこれをドラマとしては認められないですね」
と、吉田さんはピシャリ。『ケイ×ヤク-あぶない相棒-』は、警視庁公安部の捜査官・一狼(鈴木伸之)と暴力団の若頭・獅郎(犬飼貴丈)がある事件の真相を探るため、周囲の目をごまかすべく恋人契約を結ぶが……。
「公安とヤクザの話ということで、面白そうかなと思ってしまったんですが、無駄なBLシーンを入れてくるわけですよ。物語の中でさりげなく、“ここはBLっぽいけど、友情と愛情の間の感じのすごく繊細なシーン”というものであればいいんですが、“いかにも”をちらつかせるようなBLで。腐女子のみなさんにちゃんと意見聞いて作ったのかと、聞きたくなります」
近年、BLを扱ったドラマがいくつかヒットしているが、
「やっぱり『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)』('19年)や『おっさんずラブ』('16年)はBLだけど、質のよさがあった。だから、みんなに受け入れられたわけですよね。でもこの作品にはそれはなく、あったのは取って付けた感だけ。私はダメでした。名バイプレーヤーの三浦誠己さんが出てきたことだけが喜びでした」(吉田さん)
がっかりするのは、期待を寄せていたがゆえ。もちろん、4月から始まる新ドラマにも大いに期待しています!