女性が不利になる政治のカラクリ

 2018年に公務員を辞め、政治の世界に身を投じた。国会議員となった現在は地元・大阪と東京を往復する。子育てと政治活動を両立させるには、1人では難しい。

「国会会期中は東京に張りついているので、平日は子どもに会えません。子育ては旦那に任せている状態。ただ、私は恵まれていて、実家の母が週1回、子どもにごはんを食べさせに来てくれたり、旦那が結婚前から家事をやっていたので立候補できました」

 政治活動を始めてからは、通勤ラッシュの時間帯に沿道で街頭演説に立てるよう、早朝、子どもが起きる前に家を出る生活になった。

「街頭演説のときは、旦那に“(子どもを)起こしてな、学校行かせてな”と伝えてから家を出るんです。でも、実は学校に行っていなかった、ということもありましたね」

 国会議員などの候補者にとって、顔と名前を売ることは死活問題だ。

「コロナ前には“とにかく飲み会に行け” “集会に行ってこい”と、よくアドバイスをされました。選挙の世界に詳しい人から“集会にあの先生が来たら、手をギュッと握って、挨拶をしてね”と言われたりして。そんなの気持ち悪くないですか? 発言自体がセクハラというか、無理ですという感じで握手は拒否しました。  そもそも顔と名前が売れないと選挙に通らないシステム自体が女性にとっては不利ですし、育児や介護中の人にとっても、障害がある人にも不利だと思います」

 女性特有の問題に悩まされたこともある。3年前に挑んだ府議選では選挙期間が生理と重なり、トイレへ行くのもままならない中、猛烈なかゆみに襲われた。

「薬も効かず、すごいつらくて。選挙が終わってからも1週間ぐらい治りませんでした。“疲労で粘膜の免疫が下がり、もともといる菌が悪さをしたんだろう”と婦人科で言われましたね。当時は無所属で女性ネットワークに参加していたんですが、この話をするとみんな口々に、わかる!と言っていました。女性議員のなかには1期で辞めちゃう人も結構いるらしいんですが、正直、気持ちはわかります」

 女性ならではの困難はほかにもある。日本社会では大石議員のように、はっきりとモノを言う女性ほど叩かれやすい。今回、橋下氏が大石議員を訴えたのは、彼女が「わきまえない女」で、見せしめの意図があったのではないかという声も聞こえてくる。

「橋下さんが今までに訴えた相手は、ジャーナリストの岩上安身さんや有田芳生参院議員で、おっさん、おっさんと来て、今回の裁判はおばはん(の私)やから、女性だから訴えたとまでは言えないかなと思います。男か女かというより橋下さんの場合、“弱いくせにモノを言うな”という、権利を要求する弱者への反感を強く感じますね」

 大石議員は維新批判の急先鋒。国会議員になる前の昨年秋、街頭宣伝で“大阪の成長率は全国平均以下”とのデータを示し、“大阪の成長を止めるな!”という維新のキャッチフレーズがうそであることを暴くなどしてきた。今回の裁判を通して、橋下氏は大石議員を狙い撃ちにして、維新への批判の封じ込めを狙ったようにも見える。

「大阪はコロナにより亡くなった人は全国1位なのですが、関西のメディアが維新のコロナ対策がうまくいっていると報道するので、吉村知事の人気が非常に高く、維新が大躍進をしています。

 それでも今回、やり玉に挙げられたインタビュー記事の内容のように、維新政治の問題について批判を続け、橋下さんの元知事・元市長としての責任を問うていきたいと思っています。裁判にも絶対に勝ちますので、ぜひご注目ください。

 私の口を封じても無駄です。私は黙りません!」

〈取材・文/横田一と週刊女性編集部〉

 横田 一 ●フリージャーナリスト。多くの雑誌やネットニュースで記事を執筆、『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)ほか著書多数。インターネット動画ニュース「デモクラシータイムス」で「横田一の現場直撃」を公開中。