『セーラー服を脱がさないで』はいまだに敬遠
洋楽のヒップホップやロックのCDジャケットなどに、「PARENTAL ADVISORY」と書かれたステッカーや印刷がされているのを見たことがあるだろうか。これはアメリカで暴力や性的など過激な表現を含む歌詞に対する警告として、全米レコード協会が添付し保護者への注意喚起をするもので、一部の店舗では販売できないこともある。
「それが逆に過激でカッコいいということで、日本のCDにも同じものが添付されることもありますが(笑)、日本では基本的にはこういった基準はないですね」
日本の場合はというと、問題がありそうだと懸念された場合には、「基本的に自主規制のような対応をすることが多いです」と、あるテレビ関係者は言う。続けて、
「よく放送禁止曲という言い方もしますが、実際にはそういう指定は現在は存在せず、エロすぎたり差別的な表現があったりする場合は、各局、各番組での判断ということになります。今でも『セーラー服を脱がさないで』は炎上を避けるために敬遠される曲だと聞きます」
過去には自主規制でなく、回収や販売中止といった措置がとられることもあったが、メッセージ性を大切にし、“届けたい”と強く思うアーティストもいるはずだ。
「RCサクセションの『カバーズ』(88年)がいったん発売中止になって、別のレコード会社からリリースされた一件は、今も有名ですね。あえてインディーズでリリースするなどしてメッセージを届けるというやり方もありましたし、今は動画サイトなど別の形で届けるやり方もあります。炎上をおそれるあまり、一部の名曲が地上波などでは気軽に流せなくなったりしないといいですね」
制作当時は問題なくても、今の時代では“不適切な表現”と認識した場合、過去の作品を放送するときに、理解を求めるための「おことわり」が出されることがある。昔の曲を扱うとすると、同様の措置をとる時代が来るのかもしれない。ちょっと寂しい気もするが。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉