映画業界の性暴力は社会的な問題になった。映画監督有志が声明を出すなど改善への動きがあるが、まだ明らかになっていない事実も多い。
「性暴力は言語道断ですが、ほかにも課題は山積みで、現場ではパワハラも横行しているようです。“監督の厳しい指導に耐えて演技に目覚める役者”という構図が称賛されてきた悪しき習慣がありますから。言葉の暴力に加え、金銭的な搾取も行われていると聞きますよ」(映画ライター)
映画監督の上西雄大氏もそのひとりだという。
「40歳を過ぎてから俳優になり、監督業を始めたのは最近のことですね。『西成ゴローの四億円』や『ひとくず』など、いくつかの作品が海外の映画祭で賞を取っていますが、どれも権威のある映画祭ではないので、あまり価値はありません」(同・映画ライター)
「てめぇの人間性がおかしいんだよ」
俳優の男性Aさんが、被害に遭った体験を話してくれた。
「2年ほど前、監督から“今度映画の撮影でこういう役があるから、出たいなら来て”と連絡がありました。ギャラや宿泊費、交通費の話はなかったんですが、映画に出られるならいいかと思って、自腹で手配したんです。撮影地の宮古島に到着すると、別のスタッフから“今日の撮影なくなったらしいよ”と聞かされ、なぜか3日間スタッフの手伝いをすることに。4日目の早朝にようやく私のシーンの撮影があったのですが、2時間で終わったうえ、現場で解散と言われ空港まで1時間歩いて帰りました」
Aさんは1泊2日の予定だったはずが、4日間宮古島に滞在することになった。
「演技より、手伝いに駆り出される時間のほうがずっと長かったんです。ギャラの支払いなどはいっさいなく、10万円ほどかかった滞在費はすべて自分持ちです」(Aさん)
それなのに、感謝の言葉はなかったという。
「スタッフの手伝いをしていると、“てめえの人間性がおかしいんだよ”と急に怒鳴られたことも。感情の起伏が激しい人なのはわかっていましたが、ミスをしたわけでもなく、ましてや私は役者として来ているのに……」(Aさん)
スタッフの男性Bさんも、上西監督の現場での横柄な態度と行動を目撃していた。
「自分よりも格上の役者さんに対しては人当たりがいいのですが、下のスタッフ、キャストに対しての振る舞いは“王様”そのものですね。とにかくお金を使いたくないらしく、スタッフの数が圧倒的に少ないうえに、ギャラをほとんど支払わない。私なんて、当初提示されたギャラをクランクイン直前になって半額にされました。スタッフが少ないから現場がうまく回らないのに、“おまえらの頑張りが足りないからだろ!”と激高するんです」