ロボットやリモートも予知していた『こち亀』
「ロボットの警察官」も何度か登場した。そのうちの1つは、59巻(1989年8月)の「激突!!成績くらべの巻」。派出所に勤務するロボット警察官が、住民らに対し、親切に道を教えたり、横断歩道を渡るサポートをする。両津勘吉よりもロボットのほうが優秀という見え方になってしまい……。
人間とコミュニケーション可能なロボットの存在は、『ドラえもん』をはじめ、ほかの漫画やアニメにも登場するため、「こち亀」独自の発想ではない。
ただ、読んでいると実現の可能性を考えてしまうし、近年のAI技術を見ているとコミュニケーション可能なロボットの実現は、そう遠くはないと思えてくる。
例えば、ソフトバンクが提供する「Pepper」。誕生したのは'14年6月で、まだロボット警察官のように二足歩行はできないが、現在では羽田空港などで案内役を務めている。
同話に両津の《落とし物や盗難届などのデータは本署と直結している》というセリフが出てくるが、現在はインターネット接続で、落とし物検索は外部からも利用可能だ。わざわざ警察署へ出向かなくてもいいというのは、ありがたい。
漫画内で所長は《わずかな距離でも、荷物をもってあげるあの姿勢が大切だと言っているんだ》と言い、親切心では両津らが勝っていることを表している。
そのうち、「親切心」も、ロボットに勝てない日がやってくることの暗示かもしれない。
「自動販売機型ロボット」も実現している。監視カメラが付いているようで、空き巣に入ったことがわかる。その情報がロボット派出所に伝えられロボット警察官が捜査しにいくシーンがある。
この仕組みは、高性能の小型防犯カメラを内蔵した「みまもり自動販売機」(キリンビバレッジ)に搭載されている。'18年夏から東京都や埼玉県、神奈川県内に設置された。実際に、映像から容疑者を検挙したケースもあった。
同じ巻の「テレビでこんにちは!の巻」では、リモートワーク時代を先読みした、テレビ会議のストーリーがある。仕組みとしては、ひとりひとりがテレビの前にいる。相手を見る場合、自身が映るテレビを相手方に向ける必要がある。
多人数で別の人と話す場合、向きを変える必要があるが、それは自動化されていない設定。方向を変えるバイトを両津が行うというストーリーだった。
この仕組みを使って同窓会や結婚式を行うシーンがある。詳細は書かれていないが、テレビの前方にカメラとマイクが付いているのだろう。今で言えば、リモート同窓会、リモート結婚式ということになる。
さらに現代のアバターを思わせる設定も。家にいてリラックスしているが、同窓会ではフォーマルでいたい。そのため、顔出しパネルのように、スーツを着ているように見せるサービスまである。