東京・杉並区在住の高木さん(仮名)は、杉並区荻窪福祉事務所に生活保護の申請をする際、親族に知られたくないと扶養照会を拒否する申出書を提出。すると職員に受け取りを強く拒否され、地方に住む両親に扶養照会通知が送られてしまった。本サイトはこの“問題”について、生活困窮者の支援活動を行う『つくろい東京ファンド』の小林美穂子氏によるレポートを2度に渡り報じてきたが、ここにきて第3弾が届いた。杉並区役所、さらには杉並区長の不誠実な対応と、疑わざる得ない“黒い闇”。高木さんが3月に送った「区長への手紙」は本当に読まれているのだろうかーー
2021年春、生活保護に伴う扶養照会(親族に援助の可否を問う通知)の運用が改善され、申請者の意思が一定尊重されるようになった。
生活保護の申請をすると「この申請者の援助をできませんか?」という通知が親族に送られる。この扶養照会がハードルになって、生活に困っても生活保護制度を利用しない人がたくさんいることが問題になっている。
昨年春の運用改善は、扶養照会があるために「助けて」と言えない、そんな現状に危機感を持った官僚が厚生労働省にいたことを偲ばせる。
面談室に放置された高木さん
改善の内容は細かく設定されていて、「10年以上連絡をとっていない」「(親族が)70歳以上の高齢である」「この親族に借金がある」など、かなり具体的に示されているが、基本的には扶養照会を実施することが(1)申請者の自立を阻害する、あるいは(2)親族に援助を見込めない、ということが分かれば扶養照会は省略していいとされている。
また、申請者が扶養照会を嫌がる場合には、特に丁寧に話を聞いて、「しなくてよい」項目に当てはまるものがないか聞き取りをするようにという助言が加わった。
私たちは、生活保護制度に詳しい法律家や研究者たちとともに、厚労省の通知をそのまま落とし込んだ「扶養照会を拒否するための申出書と添付シート」を作成し、扶養照会を拒む申請者の事情を福祉事務所が一目で分かるようにした。
ところが、である。
2021年7月、高木さん(50代)は杉並区荻窪福祉事務所で生活保護の申請をした。その際に、地方に住む両親が80代と高齢で、しかも二人ともに持病を抱えていて老々介護の状態で自分たちの生活でいっぱいいっぱいであること、きょうだいからも援助の見込みはないことを伝え、その旨を記入した申出書も持参した。
しかし、杉並区荻窪福祉事務所はこの申出書を受け取ることすら拒否し「どうしても提出するなら保護の申請はできない」と虚偽の説明をした上、イジメのように高木さん一人を面談室に放置したりした。
高木さんは、申請後も扶養照会の拒否を表明、懇願し続けたものの、ついに11月には地方に住む両親に扶養照会通知が送られてしまう。
生々しい経緯については、過去記事を読んでほしい。