扶養照会は保護の要件であるかのようなHP説明
杉並区のホームページの「生活援助」の中の「よくある質問」のページには、2022年3月末まで「保護を受けるための要件はありますか?」という質問に、「親・きょうだい・子どもなど扶養義務者からできる限りの援助を受けるようにしてください。」と、「要件」として挙げていた。
国は、扶養照会の位置づけを「保護に優先されるもの」としており、「要件」とも「前提」とも定めていない。
これが杉並区の認識だったのだとしたら、職員はただ上の指示どおりに動いていたのかもしれない。しかし、福祉事務所はそれを頑として認めず、事実を捻じ曲げ、矛盾だらけの答弁を議会で繰り返している。そして、話し合いを求める高木さんとも、区議や支援者とも断固として話し合おうともしない。その姿勢は徹底している。
ここで、これまでの杉並区とのやりとりを簡単ではあるが振り返ってみたい。
■2月4日 高木さんと支援団体、複数の区議で杉並区に申し入れを行い、高木さんへの謝罪と対応改善を求める。同時に、ホームページ記載事項の誤りも指摘し、訂正を求めた。このとき、管理職は誰一人出てこず、係長が書類を受け取る。この時点での杉並区の回答は、コロナ禍を理由に「話し合いは当面不可能」とのこと。
同日夜 東京都が都下自治体宛に「生活保護に係る扶養能力調査における留意事項について」と題した事務連絡を発出。
■2月16日 樋脇岳議員(立憲)が区議会の一般質問で質問。
「生活保護を申請した区民が親族に扶養照会をしないよう求める申出書を出したのに、区職員が受け取りを拒否したのはなぜか」それに対し、保健福祉部長の回答は「抗議、要請書への対応についてですが、今回の事案において福祉事務所は誤った対応は行っておらず、本人から謝罪も求められておりませんので、特段の対応は考えておりません」高木さんの意思とは食い違う回答だった。
■3月初旬 謝罪も、話し合いも、対応改善も拒否し、高木さんの言い分を虚偽のごとく議会で報告、回答する福祉事務所に困り果て、高木さんが区長への手紙を送る。
同時に、ケース記録(面談の記録)の開示請求をする。
■3月9日 予算特別委員会にてくすやま議員(共産)が本件について質問。福祉事務所長が「高木さんが申出書を提出すれば扶養照会されないと誤認していたため、受け取らなかった」と説明。
■3月17日 ケース記録が届く。そこには、「扶養照会に関する申出書を持参していたが、申請時必要な書類ではないため受け取らず」と記載されており、3月9日のくすやま議員の質問に対する回答と食い違う。
このケース記録にも高木さんが一貫して扶養照会を嫌がっていたことが明記されており、区側がたびたび「扶養照会は合意のもと実施」と話していた内容とも異なる。
■4月1日 杉並区のホームページが更新され、扶養照会の説明が修正される。
■4月中旬 3月21日に新型コロナウィルス感染症まん延防止等重点措置が終了したこともあり、樋脇岳区議より保健福祉部長へ高木さんとの話し合いを打診。部長から福祉事務所長に伝えるということに。
■4月27日 所長からの返答はなく、樋脇区議が確認のため何度も電話をかけるもなぜか常に不在。折り返しもなし。係長の一人より「所長は会いません」という伝言が樋脇区議に届けられる。
■5月9日 再び申し入れを郵送。
■5月22日 3月初旬に高木さんが送った「区長への手紙」の回答はいまだない。