「社長面接」に合格して駅長に!

「貴志川線沿線には神社が3つあり、この路線はもともとその神社を回るためにできた鉄道です。これだけ多くの人を集めたのは、たまちゃんが神社の神様の使いだからではないでしょうか」(山木さん)

 地方ローカル線の再生のシンボルとなった和歌山電鐵は、地域活性化の功績を残した。'15年、たまが没した際の社葬には、和歌山県知事をはじめとした公人、そしてファンら約3000人が集まった。

 現在、たまの遺志を引き継ぎ、“ニタマ”と“よんたま”の2匹の猫が貴志川線を盛り上げるべく、駅長として奮闘している。

「ニタマは、岡山県で保護され、その後、当社に『里親になってくれないか』と依頼があって預かることに。当社のねこ駅長訓練所に入所し、自ら仕事をする、爪をたてない、帽子をかぶるのを嫌がらないといった社長面接に合格し、今に至ります。名誉永久駅長のたまちゃんがいたからこそ、多くのつながりができました」(山木さん)

 '21年12月にデビューした新しいたま電車ミュージアム号を目当てに、今も多くのファンが訪れるという。

「たまちゃんのためにも、これからも工夫をして、和歌山電鐵の魅力を伝えていきたいですね」(山木さん)

【そのほかにも……あの動物たちの“その後”】

人面魚
1990年に一大ブームを巻き起こす。今も当時のように、善寳寺(山形県鶴岡市)の貝喰池で泳いでいる

ロシナンテ
『雷波少年』(日本テレビ系)のドロンズが挑戦した「南北アメリカ大陸縦断ヒッチハイク」で人気者になったロバ。現在は、田中義剛が経営する北海道の花畑牧場で暮らしている

カッタくん
山口県宇部市のときわ公園で放し飼いにされていた、オスのモモイロペリカン。幼稚園児とのふれあいが印象的だった。'08年に死ぬものの、1羽の息子、6羽の娘、2羽の孫が

バブルス
故・マイケル・ジャクソンさんと共に暮らしていたことで知られるチンパンジー。現在は米フロリダ州の「Center for Great Apes」(大型類人猿センター)で余生を送っている

取材・文/我妻弘崇