おニャン子クラブのウリだった“シロウト感”
生稲といえば元おニャン子クラブのメンバーで、「うしろ髪ひかれ隊」という3人組ユニットのセンターを務めていました。工藤静香もこのユニットのメンバーでしたが、工藤サンのように個性が強いタイプは、好き嫌いがはっきりわかれるタイプでしょう。生稲は工藤サンのようなアクもなく、自己主張もそう強そうではない。誰にでも好かれるタイプと言えるでしょう。
生稲がおニャン子クラブ出身だったというのも、見逃せない点だと思うのです。おニャン子クラブのウリの1つは、シロウト感でした。それまでアイドルといえば、コンテストやオーディションで何十万人の中から1人選ばれる特別な人というイメージが強かったのですが、おニャン子たちは『夕焼けニャンニャン』(フジテレビ系)内のオーディションで選ばれたら、あっさりメンバー入りし、テレビに出てスターになっているように見えました。実際にシロウトさんもいたようですが、国生さゆり、渡辺美奈代、渡辺満里奈、工藤静香など、ソロデビューも果たした人気のメンバーは「大きなコンテストでグランプリを取ることはできなかったけれど、それをきっかけに別の事務所からスカウトされた」という、すでに事務所にスカウトされていたセミプロでした。
私はおニャン子の全盛期をテレビで見ていましたが、彼女たちはそういう前歴を積極的に押し出していなかったように思います。過去の業績をアピールすると、おニャン子のウリである“シロウト感”、努力しないでスターになれる“特別感”が損なわれてしまうからではないでしょうか。
「セミプロでありながらアマチュアのふりをするとはどういうことか。一言で言うのなら、「芸能人として本当にやってはいけないことを十分わかった上で“わからない”と言える、やる気があるのにそれを見せない人」を指すのだと思うのです。いうなれば、シロウトに徹することができる、プロフェッショナル・シロウトです。
生稲はおニャン子クラブに入る前にホリプロタレントスカウトキャラバンや、ミス南ちゃんコンテストに応募していたことを2016年のインタビューで話しています。しかし当時はそんなことはおくびにも出さず、「たまたま受けたら、受かっちゃった」というスタンスで振る舞うのがおニャン子として正しいあり方で、野心や野望を隠して、Theシロウトとしてふるまうのは、女性が男性にかわいがられるために必要な、一種の処世術でもありました。