ドラマ離れを防ぐテレビ局の戦略は“アメリカ方式”?

 成田さんが今期注目したのは『競争の番人』『オールドルーキー』『ユニコーンに乗って』『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』『初恋の悪魔』の5作品。

「『競争の番人』は公正取引委員会を舞台にしていて、設定が新鮮で面白い。ただ初回90分スペシャルで問題が解決せず、次回へ続くだったので、ガッカリした方も多かったのでは?初回の放送時間をストレッチするのであれば、ひとつ問題を解決したうえで次回に引きがある展開にしてほしかった。

ドラマ『競争の番人』で共演する坂口健太郎と杏
ドラマ『競争の番人』で共演する坂口健太郎と杏
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『オールドルーキー』は元プロサッカー選手の主人公が、途中ピンチから最後は盛り返して気持ちよく終わるという日曜劇場の王道な作り。元サッカー選手の大久保嘉人が監修し、松木安太郎が解説のアテレコをするなどサッカーのシーンがきちんと作られていて違和感がなかった。不安要素があるとすればスポーツ選手のセカンドキャリアの話なので、『半沢直樹』のようなサラリーマンの話と比べ視聴者にわかりづらい点ですかね。

ドラマ『オールドルーキー』で共演する綾野剛と芳根京子
ドラマ『オールドルーキー』で共演する綾野剛と芳根京子

『ユニコーンに乗って』は、女性CEOや若い人たちのIT企業におじさんひとりという設定は、アン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロの米映画『マイ・インターン』のような設定ですが、安定感のある西島の演技で安心して見ていられる。エンジニア役で自由なキャラを演じる青山テルマもいい!

ドラマ『ユニコーンに乗って』で共演する西島秀俊と永野芽郁
ドラマ『ユニコーンに乗って』で共演する西島秀俊と永野芽郁

 東大卒のパラリーガルと高卒の弁護士が市井のトラブルを解決する『石子と羽男――』は、問題が次々と展開して視聴者を翻弄、最後に初回の依頼人役だった赤楚衛二が会社を辞めて弁護士事務所にアルバイトで入ってどうなるのかという今後が楽しみ作りでした。

ドラマ『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』で共演する中村倫也と有村架純
ドラマ『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』で共演する中村倫也と有村架純

『初恋の悪魔』は、坂元裕二脚本らしい畳みかけるセリフ劇。捜査権のない林遣都、仲野太賀、松岡茉優、柄本佑という男女4人による“小洒落てこじれたミステリアスコメディー”で、出てくるキャラが全員変な人で面白い(笑)。

ドラマ『初恋の悪魔』で共演する林遣都と仲野太賀
ドラマ『初恋の悪魔』で共演する林遣都と仲野太賀

 またタイトルの意味が初回では全くわからずで、どう物語が転がっていくのか楽しみ。同時に仲野の兄(毎熊克哉)が殉職なのか、事故死なのか、殺人なのか……というドラマを貫く謎解きの縦筋がある構成にも期待大です。

 そしてなぜか柄本と『ユニコーン――』の西島の役名の名字が、偶然にも同じ“小鳥”でカブっているんですよ。対照的なおじさんキャラの“小鳥”さんから目が離せません(笑)」

 韓国の大ヒットドラマ『梨泰院クラス』をリメイクした『六本木クラス』は二桁視聴率に届かなかった。

『六本木クラス』座長としてしっかり現場を引っ張っていた竹内涼真
『六本木クラス』座長としてしっかり現場を引っ張っていた竹内涼真

「韓国版オリジナルと比較するとリメイク版も同じような設定・ロケーションなんですが、音楽の使い方やカメラの切り替えしが多く落ち着かない印象です。脚本も演技もちゃんとしていてオリジナルへのリスペクトも感じるし、六本木での大々的なロケを試みるなどしていますが、全体的にチープさが否めない。

 コピーするなら完璧にしないとクオリティーを下げるだけだし、なぜわざわざリメイクするのかをしっかり考えないと、テレビの配信やスマホでオリジナルをチェックできる時代では、話題性だけではすぐに視聴者に飽きられてしまいます」

『テッパチ!』『純愛ディソナンス』はともに2部構成。『競争の番人』を含めて今期のフジテレビのドラマは3人から4人という複数での脚本を担当することについて指摘も。

「アメリカでは映画やドラマの脚本をチームで共同執筆しています。日本ではアニメやシリーズ作品は複数で手掛けていますが、連ドラでは人気脚本家ひとりで書くケースが多い。

 ですが人気脚本家は各局で争奪戦ですし、書ける作品の数にも限度があると思います。チーム制は働き方改革というよりも内容の充実や面白いドラマを作るための取り組みではないでしょうか。

 NHKは先日、脚本開発チーム“WDR(Writers' Development Room)”プロジェクトを立ち上げました。“世界を席巻するシリーズドラマを作る。”と銘打ち、ドラマの根幹である企画と脚本に特化した人材を募集しています。こうした動きもあるので、今後はチーム制や共同執筆が主流になっていくかもしれません」

 ドラマ離れ、視聴率不振の起爆剤になれるか。