中国からは5月の時点で研究報告があった。シノバック製ワクチン(不活化ワクチン)3回接種者と、ワクチン接種後にBA.1感染を経験した人の血液を使って調べたところ、BA.4とBA.5は、BA.2よりも強力な免疫逃避を示したという。
『New England Journal of Medicine』に掲載されたハーバード大学の最新論文でも、BA.4とBA.5が過去の感染やファイザー製ワクチン接種による免疫を大幅に回避する、という研究結果が示された。
ファイザー製ワクチンを3回接種完了したか、過去にBA.1やBA.2に感染した27人の血液を調べたところ、BA.4・BA.5に対する中和抗体反応は、パンデミック初期の新型コロナウイルス(アメリカで見つかった従来株)の約20の1にすぎなかった。BA.1およびBA.2と比べても約3分の1にとどまった。
感染経験者であっても、また現行のワクチンをさらに追加接種したとしても、BA.5感染を避けられる可能性は従来株と比べてかなり下がると言わざるを得ない。
感染力はデルタ株の4倍?
それでもここへ来て政府は、追加接種の対象者の拡大を発表した。3回目接種に5~11歳の児童を、高齢者と重症化リスクの高い人に限られていた4回目接種に医療従事者と高齢者施設職員を、それぞれ含める方針という。
楽観的だった政府も、感染者の急増ぶりに危機感を持ったようだ。
そもそもBA.5 はどのくらい警戒すべきものなのだろうか? 初期オミクロン株であるBA.1も感染力は高いと言われていたが、BA.1とBA.5はそんなに違うのか。
多くの論文を網羅的に調べた研究では、BA.1は基本再生産数(免疫のない集団で1人の患者から何人に感染が広がるか)8.2でデルタ株の3.5倍、実効再生産数(感染が既に広がっている集団で1人から何人に感染が広がるか)3.6でデルタ株の2.5倍だった。
BA.1から派生した「BA.2」系統では、感染力がさらに上がった。国内の研究でも、BA.2の実効再生産数はBA.1の1.4倍と報告されている。
それをさらに上回るとされるのが、BA.5だ。国立感染症研究所によれば、東京都のデータに基づくBA.5の実効再生産数は、BA.2の約1.27倍だという。