単純に計算してしまえば(かなり乱暴で正確とは言えないのだが)、初期のオミクロン株と比べてBA.5では、1.4×1.27≒1.78倍、デルタ株と比べれば1.78×2.5=4.45倍も人にうつりやすいことになる。

 しかも東大医科学研究所の研究からは、BA5ではBA.1より重症化しやすい可能性も示された。

 BA.4・BA.5に感染したハムスターの肺周辺のウイルスレベルは、BA.2感染ハムスターと比べて3日後で5.7倍に上り、5日後でもまだ4.2倍も高かった。肺周辺のウイルス量も多く、BA.2よりも肺に効率的に広がることが示唆された。

「従来ワクチンで追加接種」は意味がない?

 このように「感染性が高く」「重症化しやすい」BA.5を前にして、私たちに今できることは何か。

 それは、今打てるワクチンを、打てる人から打っていくことだ。

「BA.5は今のワクチンを打ってもかかるんだから、意味ないでしょ?」と思われるかもしれないが、そんなことはない。

 ワクチンによって誘導されるのは、抗体による免疫(液性免疫)だけではない。

 免疫システムには、感染した細胞ごとウイルスを排除するリンパ球「キラーT細胞」も存在する(細胞性免疫)。抗体が時の経過とともに減少したり、ウイルス株が変異を繰り返したりしても、この働きは一定以上に維持されている可能性が指摘されている。

 国立感染症研究所はBA.1に関して、「抗体と比較すると、オミクロン株に対する細胞性免疫の減弱は限定的」で、「感染回復者やワクチン接種者では、武漢株に対して反応するT細胞のうち、少なくとも70%以上がオミクロン株に対しても応答する」としている。

 BA.5 に関しても、細胞性免疫の活躍をある程度は期待できると見ていい。

 細胞性免疫は特に、重症化を防ぐのに役立っていると考えられる。かかりやすいうえに肺で増殖するBA.5だからこそ、これまでのオミクロン株(BA.1やBA.2)以上にワクチンで細胞免疫の誘導をスムーズにしておき、重症化を防ぐ必要がある。