100件以上病院に断られ自宅で死亡
――国のコロナ対策はいちばん最初から何も変わってないという印象しかありませんが?
「今年2月の予算委員会(2月21日)で、岸田総理大臣に政府の司令塔機能の強化を再度求めました。しかし、それはずっと果たされていません。私たち立憲民主党は1年以上前、昨年6月に『国民の命を守るための検査拡充・病床確保・医療従事者等支援3法案』というものを提出していますが、自民党の反応がなく審議されないので、この2月に改めて司令塔機能の強化を盛り込んだ『オミクロン・感染症対策支援法案』を提出しました。しかし、これにも反応はありません。この質疑で岸田総理は『現下の危機的な対応において必要なのは組織論ではない』などと答えていましたが、そうではないですよね?」
――国が指揮系統をしっかり立ててほしいと、私たち一般市民でさえ感じます。
「たとえば先日、品川区の83歳のがん患者さんの搬送先が見つからず、感染判明から10時間で亡くなったことがありました。容態が悪化していて、区内の『ひなた在宅クリニック山王』の田代和馬院長が駆けつけ、患者さんのマンションに来ていた救急隊員に『100件ぐらい電話したんですか?』と聞いたら、『100件以上問い合わせた』と言われたそうです。しかし、これ、都内の病院だけで探してるんです。同時期に埼玉県では病床が空いていたようでした。
医療は基本的な法律の規定で、都道府県が管轄し、最終責任を負う仕組みなんです。ただ、それは平時の仕組みです。国が司令塔となって調整して、もっと広範囲で搬送先を探せるようにならなければ、助かる命も助かりません。もう、ずっと、こうなんです」
――今も平時だと思ってるんでしょうか?
「平時ではないので、変えなくてはいけませんよね。ただ、国民の中からそんなに、とんでもなく批判する声が上がらないし、選挙も終わった、と責任を負うことを避けています」
――オミクロンは軽症だから家で寝てろとか言われますが、すごく乱暴だなって気がします。
「みなさんこれだけコロナ禍が続き、疲れ果ててます。いろいろな規制が課せられることに、うんざりしている。コロナ禍になって最初はそれこそ誰がいつ、自分が死ぬかもしれないという恐怖で自粛もした。しかし、今分かってきたのは亡くなるのは高齢者や基礎疾患のあるワクチンを打っていないような人が大半で、自分はそうじゃない、そんな一部の人のために行動制限かけられるのはイヤだ、って考える人が多い。だから政府としては大多数の人が喜ぶ行動制限なしを選択するんです。
リスクのある人たちは喜ばないけど、より共感を呼ぶようなメッセージしか出さないから、社会が分断されるんです。本来、政治とは、汚れ役を買って出て、みなさんはイヤかもしれない、でも、こういう方々を守るために今やらなきゃいけないことがあるんだと、みなさんの親御さんのことを想像してくださいと、総理は記者会見して言わなきゃいけないんです。でも、それは政府としたらリスクがあることだからやらないんです」
――どうしてそんなことに……?
「日本はみなさん、自己責任だと我慢することに慣れてしまっている。いろいろな問題で、たとえば非正規雇用の問題でもそうでしょう? 自分が悪い、自分のせいだって。今度も最低賃金が31円上がった、って大々的に言う。本来なら最低でも1500円を目指して少しずつやっていくべきでしょう? そうはならない」
ああ、ほんとうにそうだと愕然とする。私たちは他国に比べてもだいぶ低い最低賃金で働き、しかも値上ラッシュ。そんな中でジッと耐えているばかりだが、先日ネットをにぎわせた「えっ? 医療費負担がまた増えるの?」と慌てたニュースがある。
それは高額医療費負担を、財務省が「廃止」を検討しろと言っているというニュースだ。毎日新聞が7月27日付で報じた。瞬く間にツイッターで広がり、「高額な医療費はどうしたらいいのか?」「国民健康保険料は値上がりするのか?」とちょっとした騒ぎになった。