さらに、遅咲きながら80代まで活躍した赤木春恵さん(享年94)のような人もいる。若いころには「私は40歳で女優として認められるようになればいい。そのほうが気持ちが焦らなくて楽」だと話していたという。
転機となったのは、48歳で出演したNHKの朝ドラ『藍より青く』と55歳から出演した『3年B組金八先生』(TBS系)。こうした国民的人気ドラマは、遅咲き女優が世に出るには格好の場だ。
遅咲き女優たちの活躍に期待
キムラ緑子(60)は52歳で出演した朝ドラの『ごちそうさん』、高畑淳子(67)は41歳からレギュラー入りした『3年B組金八先生』でその実力が広く知られるようになった。
かと思えば、50歳で芸能界に飛び込んだ人も。竹原芳子(旧芸名・どんぐり、62)だ。証券会社や裁判所で働いてきたが、織田信長が好んだ舞に出てくる「人間五十年」という一節に触発され、若いころの夢だった芸人を目指した。
「信長だったらもう死んでる。え、私このままでええんか?」
と、吉本興業の養成所に入り、ピン芸人をやったあと、55歳で芝居の勉強を開始。映画『カメラを止めるな!』で一躍注目されたのは、58歳のときだ。
ただ、竹原をはじめ、遅咲き女優には脇役タイプが目立つ。昨年、勢いを買われて『SUPER RICH』(フジテレビ系)に主演した江口のりこ(42)も、ドラマのヒットにはつなげられなかった。今年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の序盤で、源頼朝の浮気相手をコミカルに演じた姿のほうがしっくりくる印象だ。
彼女たちのクセの強い芝居は脇役向きで、苦労した分、自分が自分がと前に出る感覚が希薄なのかもしれない。
それでも、高島礼子(58)のように、アマチュアレーサーからレースクイーンを経て女優になり、主演クラスにまで上り詰めた人もいる。また、すでに触れた浅野ゆう子は、時代を象徴する女優となったし、赤木春恵さんは88歳にして映画に初主演。「世界最高齢での映画初主演女優」としてギネス世界記録に認定された。
「人間五十年」とはあくまで昔の話。「人生百年」ともいわれる今なら、50歳でもまだ折り返しだ。遅咲き女優たちはますます活躍していくに違いない。