電話しても出ないくせにメールだとすぐ返信がくる

梅沢 こうやって話していて僕は声が大きいでしょう。こんな調子で「おまえ」とか「こいつ」って話すと怖いって言われるんですよ。

対談中の梅沢富美男(撮影/矢島泰輔)
対談中の梅沢富美男(撮影/矢島泰輔)
【写真】梅沢富美男が使いわけている2種類の補聴器

ヨグマタ 全然怖くないのに。ハッキリしてて仕事ができる人の話し方だなって感じます。「おまえ」なんて、梅沢さんの愛を感じますよ。

梅沢 そうですよね(笑)。

ヨグマタ 近頃は、きれいな言葉を使って表面的にやさしく繕っている人が多いですね。ていねいに接しているつもりなのでしょうけど、本当の思いやりや愛を感じられないことがあります。

梅沢 そうそう、若い人は面と向かう会話が不慣れで、電話しても出ないのにメールはすぐ返ってくる。「おまえ、いいかげんにしろよ、携帯電話は話すためにあるんじゃないのかよ」って(笑)。

ヨグマタ インターネットや便利なものに依存しすぎ。子どもが少ないので、甘やかされて物事をはっきり言われないで育つから、言葉に対して免疫力がないんです。梅沢さんのように身体を張ってきた方が若い人に苦言を呈するのはいいことですよね。

 でも許しが大事です。相手をあるがまま受け入れて、説教にならないように、愛をもって話しかけると若い人の反応も変わってくると思います。

補聴器を外すときは心と脳を休ませて

梅沢 突然なんですが、僕、補聴器をつけていて。以前、鼓膜が破れたことがあって、鼓膜は再生できたんですが、それからどうも聞こえづらくて。

ヨグマタ あら、気がつきませんでした。

梅沢 最初はカッコ悪いなって思ってたんですが、医者に「眼鏡をかけることは恥ずかしくないでしょう。補聴器もそれと同じことなんです。梅沢さん、ぜひ自分は補聴器をつけてるってテレビとかで言ってくださいよ」って言われて。

ヨグマタ なるほど、梅沢さんがオープンにするとほかの人も補聴器を気軽につけやすくなるかもしれませんね。補聴器を外すと聞こえづらいんですか。

梅沢 聴こえづらくてイライラしますね。

ヨグマタ 聞こうとして躍起になるからイライラするんじゃないでしょうか。補聴器を外している時間は「耳の休憩」だと思いましょう。情報をシャットアウトすれば心も脳も休まります。

梅沢 今度ドラマが始まるんですが、近頃セリフを口の中でモゴモゴ言う人が多くて。キムタクがやるようになってからみんながまねするんですよ(笑)。聞こえにくくて。「もう少しはっきり言えよ」ってつい。

梅沢さんが使っている補聴器。テレビのバラエティー番組のような1方向からしか撮らない仕事の場合は耳掛けタイプ(左)を使うが、芝居やドラマなどの撮影時は耳にすっぽり入れるタイプ(右)を使っている(撮影/矢島泰輔)
梅沢さんが使っている補聴器。テレビのバラエティー番組のような1方向からしか撮らない仕事の場合は耳掛けタイプ(左)を使うが、芝居やドラマなどの撮影時は耳にすっぽり入れるタイプ(右)を使っている(撮影/矢島泰輔)

豪華な衣装が眠る倉庫。断捨離したいけど……

ヨグマタ 梅沢さんの年齢だと、終活や引退の話になることもありますか?

梅沢 最近多いですが、僕たちの引退は、お客が決めるんです。僕たちは売り物だから、お客が入らなくなったら終わり。悩ましいといえば、倉庫に使わない舞台の道具や衣装がいっぱいで。新しい芝居と踊りができれば、衣装も新しく作るのでたまるいっぽうで。

ヨグマタ 舞台衣装は豪華なんでしょうね。

梅沢 ちょうど今、梅沢富美男&研ナオコ『アッ!とおどろく夢芝居』という舞台で全国を回っていますが、女形の舞踊ショーがあって、この衣装が豪華絢爛なんです。でもこれも舞台が終わったら倉庫行きなんですよ(笑)。

ヨグマタ 美術館などに寄付するのはどうですか。

梅沢 どうでしょうね。僕は自分の私服は、断捨離してますよ。

ヨグマタ 断捨離っていうのは、もとはヨガやインド哲学の教えで、心を浄化して悟りに向かう修行のことです。「断」は刺激に心が反応しないで執着を絶つこと。「捨」は思いを捨てエネルギーを使わないこと。

 そうすると執着が自然に離れるのです。倉庫の衣装も心の執着も死ぬときは置いていくのですから、その前に愛と感謝でお別れできるといいですね。

梅沢 そうですね。