朝ドラを機にトップ女優へ
大きく得をした朝ドラヒロインの代表格は平均世帯視聴率が18.6%だった『ゲゲゲの女房』(2010年度上期)の松下奈緒(37)にほかならない。松下は2004年にデビューしたものの、朝ドラヒロイン前は二番手以下が大半で、主演作はNHKの深夜の連ドラ『グッジョブ -Good job-』(2007年)のみ。当時から演技力はあったから、知名度不足がネックになっていた。
それが、この朝ドラで売れない漫画家の夫・村井茂(向井理)に寄り添う妻・布美枝を演じた途端、様変わりする。放送終了後はフジテレビ系『CONTROL〜犯罪心理捜査〜』(2011年)NHK『胡桃の部屋』(2012年)、テレビ朝日のスペシャルドラマ『二十四の瞳』(2013年)と立て続けに主演。以降もずっと主演級である。
既に高い評価を得ている女優も得をする。例えば『カーネーション』(2011年度下期)でデザイナー・小原糸子役を演じた尾野真千子(40)である。
当時の尾野は30歳。2007年に主演映画『殯(もがり)の森』がカンヌ映画祭コンペティション部門でグランプリを受賞しており、女優として完成されていた。だが、映画に軸足を置いて活動していたため、幅広く知られている存在とは言い難かった。
だから尾野は『カーネーション』のヒロインのオーディションを受けた。制作発表では「出たら売れる。親孝行ができると思っていた」と語り、喜びを隠さなかった。朝ドラヒロインたちの本音に違いない。
この朝ドラの平均世帯視聴率は19.1%だった。放送終了後の尾野はフジテレビ系『最高の離婚』(2013年)に出演するなどドラマの仕事が急増。CMも増えた。