縁がつながりラップバトルで優勝
しかし、就職して2か月がたったころ、転機が訪れる。
「『UMB2018』の現場で配っていた、借金したお金で作ったCDを、戦極MCバトルを主催しているMC正社員さんが聞いてくれて、ライブにブッキングしてくれたんです。そのときにバトルにも出ることになって、『戦極令和杯』という大会で優勝することができました。そこから、曲を書きながら銀行で働いて、2枚くらいミニアルバムを作ったりして。
2枚目のミニアルバムに収録されている『Mountain View』が今の僕のいちばんポピュラーな曲なのですが、“ステージをあげていく”、地元の島根県は山々が豊かで何もない場所なんですが“山を離れて本当の山の頂上の景色を見に行こう”という思いが詰まっているので、上京に向けての転機となる曲だったと思います」
そして、銀行を1年で退職して上京……はせず、千葉県に移り住んだ。
「何もわからないのに、いきなり東京に行くのは恐ろしくて。東京に近いところで働きながら音楽ができたらいいなと思って、穏やかに暮らしながら、東京でライブがあれば行ったり、クラブに遊びに出て、タクシーで2万円かけて帰ったり(笑)」
東京に住み始めたのは、昨年4月のこと。
「上京して1年間は、それなりにお金をいただけるようになったこともあって、満足してしまっていた自分がいて。クラブに繰り出したらちょっとチヤホヤされて、みんなで乾杯して最高、みたいな。
そんなときに僕の“BIGBOSS”の白井仁(ひと)志(し)さんに助けていただいて、曲作りを手伝っていただく話を受けたんです。東京に越してからの1年が、楽しいところになびいてお金を使って痛い目を見て、お酒に頼って……すごくつらかったので、そんな思いも込めて『MUNASAWAGI』をリリースしました。今はそれを抜け出して、すごくいい感じなんですけどね」
制作は、リリースの約1年前から始まったという。
「『MUNASAWAGI』をオールプロデュースしてくれたNoconocoさんという方に出会ったときに“こんな曲でやってみない?”と聞かされたのが『Magic Potion』でした。聞いたときに“これはすごいのができる”と思い、その夜に全部詞を書いて朝に送って。
お酒も進んでいたので、酔った勢いでNoconocoさんに電話をかけたら“めっちゃいいじゃん”と言ってくださり、そこから1年近くをかけて、EPが出来上がっていきました。
『Magic Potion』は、愛媛でやっていたときの思い出の映像を集めて自分でPVを作ったんです。友達に連絡して映像を使わせてほしいと直談判したんですが、PVが完成したときはみんな喜んでくれたのでよかったなと。いいところが集まっているので、ワンシーンずつしっかり見てほしいです」