「最近ね、下のチビが将棋を始めたんですよ。コミュニケーションだからって、相手になってるんですけど、駒の動きがよくわかんないでしょ。“ママはもう、天才的にダメだね”なんて言われながら(笑)」

 なお、このときの彼女は芸能人生の絶頂期。取材は2時間の予定だったが、前の仕事が押したとかで、1時間半くらい待たされた。

 しかも、到着後はメイクや撮影があり、実質15分ほどのトークで5ページもの記事を書くハメに。それでも、不思議と腹が立たなかったのは、いかにも大女優っぽい彼女の天然キャラのおかげだ。ただ、こういうちょっと抜けた感じの人がこんなに多忙で、家庭のことなど大丈夫なのだろうか、とも感じた。

売れすぎることの不幸

 また、夫もNHKの要職を務めた人。子育てについては、祖父母や家政婦にかなり任せていたともいう。そんなこんなで、次男の不祥事にもさほど驚かなかった。

 というのも、親子関係の専門家によれば、有名人の2世の場合、幼少期のコミュニケーションが不足しやすく、親がそのうしろめたさを小遣いなどで償うような姿勢をとりがち。それが子どもの、何かに依存しやすい性格につながるのだそうで、三田と次男はその典型にも思える。たまに将棋をやる程度では、不足を補えなかったのかもしれない。

 その結果、三田は「理想のお母さん女優」の座から転げ落ちた。が、2010年の映画『人間失格』で見せた、女とクスリで身を持ち崩した主人公を最後に癒し甘えさせる老女の役などは絶品だった。大物芸能人らしく、スキャンダルを肥やしにしているのだ。

 しかし、次男はそれができない。「卒母」宣言の際「かといって、見捨てたり、見放すということではありません。(略)母と子の縁が切れるわけではありませんから」と語っていた三田としてもつらいことだろう。

 そういえば、筆者がインタビューしたとき、彼女は長者番付タレント部門のトップを3年連続で独走中。仕事が断れない、という人気者ゆえの悩みも明かしていた。

 売れすぎることの不幸、というものが世の中、特に芸能界には確実に存在する。

宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。