トレンディドラマに欠かせない音楽
『男女7人秋物語』(TBS系)、『ハートに火をつけて!』、『君の瞳をタイホする!』、『愛しあってるかい!』、『抱きしめたい!』、『すてきな片想い』、『ニューヨーク恋物語』(すべてフジテレビ系)など、この時代、数多く出演していたのが柳葉敏郎(61)だ。
しかしこれだけ出ていながら、トレンディドラマ出身の俳優という印象は薄い。
「『東京ラブストーリー』の織田裕二さん、そしてたくさんのトレンディドラマに出演してきた柳葉さんが、脱トレンディの『踊る大捜査線』の好演で人気を博したのは興味深いですね。大きな流れを変えるには、すごいエネルギーが必要ですが、2人はそれを成し遂げました。柳葉さんは、ノリのいいトレンディな男性から、芯のある理想の上司へと自身のイメージを変えたわけです」
私生活でも、東京から、自分が育った秋田県へ一家で移住した。年齢とともに地に足をつけた生き方がうかがい知れる。
還暦を迎えた柳葉が現在どんな暮らしをしているのか、勝俣州和のYouTube『勝俣かっちゃんねる』で語っているので1つ紹介しよう。柳葉の住む町では、隣町と大綱引きをする祭りがあって、柳葉自身も参加していたそうだ。その時に誰かに肩をたたかれたので振り返ると、浅野ゆう子が笑いながら立っていたという。
トレンディドラマで共演して35年、浅野を「姫」と呼び、今でも友達付き合いをしているそうだ。役者としても順調で、10月から始まった痛快医療ドラマ『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)、映画『天間荘の三姉妹』に出演中。
仕事のときだけ上京し、普段は家族や地元の友人たちと過ごしているなんて、理想的なのでは。
こちらも、もうアラカンと聞いて驚いてしまうのが、唐沢寿明(59)。10代から20代前半は、仮面ライダーの敵役のスーツアクターとして活動。
「稲垣潤一の主題歌『クリスマスキャロルの頃には』も大ヒットした名作『ホームワーク』に出演。その後、29歳のときに出演した、野島伸司脚本作品で、大学時代のボート部の仲間・男女7人の青春群像劇を描いた『愛という名のもとに』でも、実直な青年役で存在感を放ちました。まっすぐな心の葛藤を演じられていて、どこか母性をくすぐる魅力がありました」
さて最近の唐沢といえば、スマホ視聴を前提にした縦型ミステリードラマに挑戦。60歳でも役者として攻め続ける姿勢に、こっちまで元気をもらえる。
そして『あすなろ白書』(フジテレビ系)の主題歌『TRUE LOVE』を歌った藤井フミヤ、月9の代表作『ロングバケーション』の主題歌『LA・LA・LA LOVE SONG』を歌った久保田利伸も60歳に。
「トレンディドラマにとって大切な役割を果たしていたのが音楽です。気持ちが盛り上がってきたここぞというときに主題歌が流れることで、テンションがさらに上がる。サビを工夫して楽曲を作る、新しい音楽の作り方が生まれてきたと思います」
『TRUE LOVE』はソロになった藤井の初期作品であり、久保田は『君の瞳をタイホする!』の主題歌、5枚目シングルの『You Were Mine』で一気にブレイクした。
「生活を、人生を、恋を楽しむことを視聴者に見せてくれたのがトレンディドラマです。東京で暮らし、流行をとらえたブランドファッションに身を包み、おしゃれなレストランやカフェバーで食事やお酒を楽しむ、そうした衣食住を疑似体験させた。絵空事のようですが、もしかしたら現実にあるのかもしれないと夢を見させてくれたわけです」
そのドラマで活躍した俳優とともに年を重ねる週女世代。青春のひとコマを彩ってくれた俳優たちには、今でも、そしてこれからもずっと輝いていてほしい。