CM出身で活躍、今井美樹や桜井日奈子

 CM出身の女優で忘れてならないのが今井美樹(49)。1984年、今井が「1日1杯のお味噌汁で大人になりました」と口にする「ハナマルキ」味噌のCMが話題をさらった。もっとも、CM出演時の今井は女性向け情報誌のモデルだったことから、「モデルがCMに出ただけだろう」という冷めた見方も強かった。

 ところが、その後の今井は女優として快進撃を始める。同年、オーディションで選ばれ、山田太一さん(88)が脚本を書いた女子プロレス界のドラマ『輝きたいの』(TBS系)に新人レスラー役で主演。10代後半の揺れ動く女性心理を繊細に表現する一方、本職さながらのレスラーぶりを見せた。

 この作品で高い評価を受けたことから、その後もTBS系『意外とシングルガール』(1988年)や同『想い出にかわるまで』(1990年)などのドラマに主演。やはり女性心理を描いた作品であり、一方で歌手としても女性をテーマとする歌をうたったことから、「OLの教祖」と呼ばれるようになる。

 芸能界入り早々、CMで顔を売りまくったのが桜井日奈子(25)。2014年、17歳の時に「岡山美少女・美人コンテスト」で美少女グランプリに選ばれると、翌2015年から賃貸住宅探しサイトの「いい部屋ネット」(大東建託)のCMに登場した。

 このCMは出稿量(流れる回数)が多いため、桜井の顔を知らぬ者はいないほどになった。完全にCM先行であり、女優デビューは2年後の2016年。日本テレビ系『そして、誰もいなくなった』に出演した。2020年にはテレビ東京の深夜ドラマ『ふろがーる!』で地上波初主演も果たした。

 女優にとって、売れて契約金が高くなってからCMに出たほうが得なのか、それとも自分の宣伝にもなると割り切り、契約金の低い時からCMに出るべきなのか? その金銭的損得はほぼないと言っていいようだ。新人でCMに出始めようが、売れたら契約金が見直されるからだ。

 もっとも、スポンサーの中にはCMに出演する女優の契約金はなるべく抑えたいと考えているところもある。その場合、人気が出て契約金が高くなると、ほかの女優と交代となる。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。