「そうとも言い切れません。というのも、今年は史上もっとも早い梅雨明けが発表されましたが、その後、気象庁が取り消しました。なかなか梅雨が明けず、グズついた天気が続く今年のような夏が、今後は多くみられるかもしれません。なんとなくはっきりしない夏と、厳しい夏が1年の中で交互に訪れる可能性もありますね」
気象庁は今年の梅雨明けの時期について、北陸地方と東北地方では「特定できない」と発表。さらに、「梅雨がない」とされる北海道でも、多くの地域で6月に大雨を記録。
「秋も、春ほどではありませんが確実に気温が上昇しています。年によっては急に冬になったように感じることもあるでしょう。いずれにしても、季節感が以前と変わってきていることは確かです」
冬の大雪も原因は温暖化
このような季節感の変化や、相次いで発生する異常気象について、中村先生は「温暖化が深く関わっている」と断言する。
温暖化の大きな原因のひとつが二酸化炭素。温室効果ガスの一種で、石油や石炭などの化石燃料の燃焼によって排出される。
「大気中の二酸化炭素濃度は、18世紀半ばの産業革命以前は280ppm程度。それがいまでは415ppm程度まで上昇しています。地球温暖化について世界的な研究を行う政府間機構のIPCCも、最新の報告書で、温暖化はこの先もしばらく続くとしています」
温暖化の抑制のためには、世界規模で脱炭素社会の実現を目指す必要がある。しかし一方で、「温暖化は起きておらず、二酸化炭素も関係ない」とする説もある。
前述したように、温室効果ガスといえばすぐに二酸化炭素が思い浮かぶ。しかし温室効果ガスの大半は水蒸気で、二酸化炭素よりも大きな影響を持つという。地表や海の水があまり凍ることなく、人が地球上で農業や漁業を営み豊かに暮らせるのは、地球の気温を保っている水蒸気、すなわち温室効果ガスのおかげでもあるのだ。とはいえ、「二酸化炭素が及ぼす影響はわずかで、温暖化の原因ではない」ということにはならない。
「IPCCの評価報告書からも、二酸化炭素排出量の増加が気温上昇に与える影響は明らかです。問題は、気温が上がったせいで大気中の水蒸気量も増加していることです」
暖かい空気ほど、より多くの水蒸気を含むことができる。つまり気温が上がれば当然、大気中の水蒸気量も増える。
「これが、日本で増え続ける豪雨や強大な台風の一因になります。また水蒸気自体が温室効果を持つため、量が増えればさらなる気温上昇を引き起こします」
二酸化炭素が気温を上昇させ水蒸気量を増やし、その水蒸気がさらに気温の上昇を招くという、まさに堂々巡りの状態だ。だが、この現象はマイナスの面だけではないのだ。