なぜご飯のお供だった福神漬が、カレーの付け合わせになったのでしょうか?
有名な説が、日本郵船の外国航路でカレーに福神漬を付けはじめ、それが全国に広まっていったという説です。
ところが日本郵船には、外国航路でカレーに福神漬をつけたという記録がないのです(『別冊サライ 大特集カレー』所収 松浦裕子「脇役讃歌 福神漬 VS ラッキョウ」)。
日本郵船株式会社総務部が編集していた雑誌『ゆうせん』1985年2月号に、「百周年記念 OB座談会 豪華客船とともに」という対談が載りました。
この対談において、1927(昭和2)年入社、外国航路でチーフコックを歴任したOBの丸山久義さんが次のように話しています。
“池の端の『しゅえつ』の社長さんが、テレビ対談のときに、福神漬けの起源について聞かれ、「郵船の船のコックさんが添えるようになったのが始まりです。お陰さまで、よく売れます」と言ってました”
つまり日本郵船のチーフコックが知らないことを、当時の酒悦の社長がテレビで主張していたのです。
そこでこの記事を書くにあたり、酒悦に取材を申し込みました。ところが得られた回答は、一言でいうと「わからない」というものでした。
日本郵船においていつ、なぜカレーに福神漬がつくようになったのか(そもそも本当についていたのか)。なぜそれが全国に広まったのか。それは誰が何を根拠に主張しているのか。まったくわからない摩訶不思議な説が「日本郵船説」なのです。
小林一三が福神漬をつけるよう指示?
「TVムック 謎学の旅」という、かつて日本テレビ系列で放映されていた番組において、「追跡!!なぜカレーに福神漬か?」という特集が組まれたことがあります。
番組の内容は、書籍として日本テレビ社会情報局編『TVムック 謎学の旅』にまとめられています。その内容は、阪急グループ創業者小林一三が外国航路から帰ってきた際に、阪急百貨店食堂のカレーに福神漬をつけるよう指示したというものでした。