女優業をセーブし、付きっきりで介護
再婚と前後し、同居していた母・美年子(みねこ)さんの持病が悪化する。10年以上患ってきた慢性閉塞性肺疾患(COPD)で、24時間の酸素療法が必要になり、在宅介護に踏み切った。女優業をセーブし、付きっきりでの完全自宅介護である。
「介護がどうというより、母の命と向き合うことが自分の役割なんだという思いが私の中にありました。親の痛みや人生を受け入れるのってすごくつらいこと。でも母の生きざまを見せてもらい、看取(みと)ることで、自分が生まれてきた意味というものを考えられたらと……」
一度発症すると完治は難しいといわれるCOPDという病。介護の過程で絶望し、諦めかけたこともあった。希望を失いかけたとき、理学療法士・千住秀明先生が実践する呼吸リハビリテーションの存在を知り、そこで病状が大きく改善したという。
「千住先生は理学療法士の第一人者で、先生のリハビリを受け、母はどんどん回復していった。本当に奇跡のようで、人間の再生する力ってこんなにもすごいものなんだと驚かされました」
母・美年子さんが入院したのは2017年秋で、千住先生が当時在籍していた東京・清瀬市の病院で2か月間にわたり呼吸リハビリテーションを行っている。千住先生に当時の様子を聞いた。
「病院にいらしたとき、お母様はすでにエンドステージに近い状態。病院に向かう車中で呼吸停止に陥り、救急車でいったん救急病院に運ばれ、意識を取り戻したところでうちに入院しています。
来院時は歩行はおろか、ご自身で車椅子にも移動できない状態でした。けれどCOPDというのは手足は動かせるので、本来であれば身の回りのことは死ぬまで自分自身でできる。
筋肉を鍛えることによって燃費を良くし、少ない酸素で肺に負担をかけず効率良く動けるようにするのが呼吸リハビリテーション。お母様も体幹と身体の筋肉を鍛えるうちに、体調も改善し、表情もどんどん変わりました」
千住先生の指導のもと、呼吸リハビリテーションに打ち込み、2か月後には200mの自立歩行を叶えた母・美年子さん。そこに至るには当人の意志と努力、それをサポートする家族の力があった。