右の腕に私、左の腕にみっちゃん
みっちゃんは、素顔がとてもきれいな人。たびたびお得意のしめじご飯をこしらえて、撮影現場に持ってきてくれた。みっちゃんのしめじご飯はとっても美味しくて、私はいつもペロッと平らげちゃったっけ。
猪木さんとみっちゃんが結婚したのは'71年だから、このときはまだ2~3年目。みんなでご飯を食べていると、みっちゃんは「うちのアントンが、うちのアントンが」と楽しそうに話していた。
そのアントンが、『顔で笑って』の打ち上げにサプライズで登場したことがあった。スーツに身を包んだ猪木さんは、とても精悍でカッコよかったことを覚えている。均整の取れたあまりに大きな身体に、みっちゃん以外の私を含めたキャストたちは、本当に目を丸くしたんだから。
思わず私は「両腕に1人ずつぶら下がっても大丈夫?」と聞いてしまった。アメリカのポスターで見かけるような、上腕二頭筋に女性がつかまってぶら下がる……今思えば失礼な質問(というかお願いね)なんだけど、そうとっさに言ってしまうくらい、その肉体は頑丈な感じがした。
猪木さんは「ムフフ」とこぼすと、両腕に力こぶを作り、「どうぞ」と言ってくださった。右の腕に私が、左の腕にみっちゃんがぶら下がる。はしゃぐ私たちをよそに、猪木さんは平気な顔で私たち2人を持ち上げ続けてくれた。「すごーい!」。ぶら下がりながら笑う私は、ただただその力強さに感心した。
一度、みっちゃんに「あんなに大きいんだから、おうちで夜中にトイレや廊下で見かけたら怖くない?」と聞いたことがある。すると、「うちのアントンは化け物じゃないわよ!」と叱られてしまった。確かに、怒られて当然の質問よね(笑)。
『顔で笑って』は、朝から夜まで大変だったけど、本当に楽しい現場だった。このとき宇津井さんは、表情に出していらっしゃらなかったけど、実は痔で苦しんでらしたのよね。宇津井さんも『顔で笑って』らしたのよ。
(構成/我妻弘崇)