ご当地カプセルトイで地元と向き合う

「私たちのような中小企業は少数ロットから生産が可能。小回りが利く点も、ご当地カプセルトイと相性が良かった」

 前出・アルシェの中島社長も首肯する。

「われわれも少数ロットで作り続けています。大量に作るとなると在庫を抱えたくないから冒険できません(笑)。少数だからこそチャレンジしたご当地ネタを扱える」

 また、ご当地カプセルトイは、地元とあらためて向き合う好機とも中島社長は付言する。

「“埼玉都民”と言われるように、東京に近い大宮や浦和は地元愛がないのではないかと言われ続けていました。むしろ、自虐的なところがあった。しかし、映画版『翔んで埼玉』がヒットしたくらいから、自虐性をエンタメとして楽しめる風潮が高まった。

 そうした素地があったからこそ、“誰が買うの?”という『大宮ガチャ』が受け入れられたと思います(笑)。ふたを開けたら、ものすごく地元愛にあふれていることがわかったんです。エリアを広げて“さいたま市ガチャ”にしていたら、きっと失敗していたでしょうね」

 ネタが枯れることなく、『大宮ガチャ』が第5弾まで登場した背景には、SNSなどで「これを入れてほしい」といった声が多数届いたからだという。「大宮にゆかりを持つ皆さんと一緒に作り上げてきた感覚」、そう中島社長は目を細める。

「現在、第6弾を仕込んでいるのですが、いつか飽きられるということは百も承知です。ですが、カプセルトイによって大宮にも浦和にも与野にもシティプライドがあることがわかりました。その地元愛を違う形で生かしていくことが大切だと思っています」

 ご当地カプセルトイが盛り上がるのも納得だ。カプセルの中には、地域のアイデンティティーが詰まっている。

<取材・文/我妻弘崇>