現在放送中の平野紫耀が主演するドラマ『クロサギ』や、今夏放送された『パパとムスメの7日間』(ともにTBS系)など、誰もが認める名作とは言いがたい作品がなぜかリメイクされることが、令和に入ってから急増している。
「オリジナル版の『クロサギ』は平均視聴率が15・7%で、'06年の年間視聴率は13位。『パパとムスメの7日間』は13・9%で、'07年の年間視聴率は14位と数字的には平凡な結果に終わっています。'20年にFODでリメイクされた『東京ラブストーリー』のような大ヒットドラマではなく、最近は隠れた名作というべき作品のリメイクが多いのが特徴です」(テレビ誌編集者)
2つの年齢層に刺さる仕組み
増加のウラ側には、いったいどんな理由が考えられるのか? メディア研究家の衣輪晋一さんは「リアルタイムの視聴率アップや、各テレビ局が運営する動画配信サイトへの加入者増が期待できるからではないか」と分析する。
「若い人気俳優でリメイクすれば、テレビ局やスポンサーが重要視している若い視聴者を対象にしたコア視聴率が見込めます。さらに、『悪女(わる)』など、ボリュームゾーンと呼ばれる40代~50代になじみのある作品を扱うことで、その世代の視聴者も取り込むことができる。その世代はテレビ局が運営する動画配信サイトにまで加入している人はそう多くありませんが、リメイク作品を見たいために加入してくれる可能性も期待できます」(衣輪さん)
作品が話題になれば、さらなるメリットが。
「各局の動画配信サイトでは、オリジナル版も見ることができますから、そこでの視聴数も伸びてくれれば一石二鳥ですよね。見逃し配信の再生数に応じて出演者にギャラを支払うケースもありますが、ドラマの制作費と比べたら微々たるもの。過去作品の有効活用はテレビ局の課題のひとつなので、リメイクが増えているのだと思います」(テレビ局関係者)
テレビ局のライバルが変わったことも大きいようだ。
「プロデューサーなどに話を聞くと、みなさんライバルは他局ではなく世界市場だと口をそろえます。ディズニープラスで配信中の『シコふんじゃった!』はその最たる例で、世界の視聴者を意識しているから、相撲というわかりやすい題材の作品を選んだのでしょう」(衣輪さん)
謎リメイクが続く背景には、絶対的スターの不在も。
「木村拓哉さんを最後に、“この俳優が出ているから絶対に見る”というスターは出ていません。若手を育てつつ、チャンネルを合わせてもらうにはタイトルの強さが重要になってきます。最近流行っている作品の実写化では幅広い世代に見てもらうのが難しいため、かつて話題になった過去作品のリメイクが活発になっている面もあると思います。若い子たちは特撮やアニメに抵抗がないため、『スケバン刑事』などを現代風にリメイクしたら、受け入れられるかも」(衣輪さん)
何がリメイクされてもおかしくないだけに、意外な名作が令和に復活するかも!?
きぬわ・しんいち メディア研究家。雑誌『TVガイド』やニュースサイト「ORICON NEWS」など多くのメディアで執筆するほか、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中