《日本を離れてお迎えになるお正月、お雑煮やオセチ料理をお送り出来ないのが残念でございます。(略)アメリカ流のテニスが教えて頂きたくて ご帰国を楽しみに楽しみにお待ちいたしてをります》
美智子さまからの“エール”は、異国で暮らす織田さんにも伝わったことだろう。
上皇さまが皇太子だったころには、織田さんは東宮御所を訪れてテニスを楽しんだ。
美智子さまが懐かしんだ写真
「テニスの試合が終わるタイミングで、美智子さまがよくキャロットラペを振る舞われたそうです。千切りのニンジンをオイルとビネガー、塩などで味つけし、キンキンに冷やしてから出されるキャロットラペは絶品だったといいます。上皇さまのことを常にいちばんに考えていらした美智子さまらしいお心遣いが、織田さんは忘れられない様子でした」(つげさん、以下同)
会うたびに喜々として上皇ご夫妻のお話をつげさんに披露してくれたという。
「おふたりとの出会い、そして結婚は、織田さんにとってもキラキラと輝く青春の1ページだったのだと思います。当時を思い出すと同時に、“もう戻れない”という一抹の寂しさも感じられましたね」
そんな織田さんが、上皇ご夫妻と最後に面会されたのが'19年5月5日。
「上皇ご夫妻が退位後初めての私的な外出で、東京ローンテニスクラブを訪問されたときのこと。ご夫妻の若かりしころの写真を、織田さんがお見せすると、美智子さまが“懐かしい……”と目を細められたといいます。とてもうれしかったようで、その話を何度もしてくれました」
コロナ禍の影響もあり、それ以降はご夫妻と面会できないまま、天国へと旅立った。
「晩年も2日に1回は東京ローンテニスクラブを訪れ、元気に練習していた織田さんは、退位後の上皇ご夫妻の穏やかな暮らしを願いつつ、“またおふたりと一緒にテニスができたら”と話していました。卓球がお得意な上皇さまにご学友たちから“卓球台をプレゼントしたい”との夢も語っていましたが、残念ながら叶えられなかったようです」
上皇ご夫妻の胸の中には、これからもずっと織田さんとの特別な思い出が残り続けることだろう。
つげ・のり子 2001年の愛子さまご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の『皇室の窓』で構成を担当。著書に『素顔の美智子さま』(河出書房新社)など