翻って日本では、愛子さまが感染対策の観点からオンライン授業を継続中。理由は違えど、思うようにキャンパスライフを送ることができないアマリア王女に思いを馳せておられることだろう。

愛子さまは、成年行事に用いるティアラを新調せず、叔母の黒田清子さんから借用する判断をされました。実はアマリア王女も、18歳になると支給される年間2億円ほどの王族手当の受け取りを、学生でいる間は辞退しています。皇室や王室の特権に対し、世間から厳しい目が向けられる昨今の情勢を、お二方は酌んでおられます」(水島教授)

伝記に書かれた本音

 コロナ禍を機に、オランダ王室の支持率は低下した。

「’20年10月、感染対策のため国民に自粛を呼びかけている中で、国王一家がギリシャへ旅行に出かけました。’21年12月には、アマリア王女が自宅に20人近く友人を招いて、自身の誕生日会を開いたことも批判の的に。

 オランダでは当時“自宅に招待できるのは4人まで”というルールがあったのですが、王室がそのルールを破ったことを認める事態となったのです。こうした行動に疑問を持つ国民は多く、’20年には75%あった君主制への支持が、翌年には57%まで急減しました」(倉田さん)

王室公式SNSに投稿された国王ご一家の家族写真。(左から順に)アリアーネ王女、アマリア王女、アレクサンダー国王、マキシマ王妃、アレクシア王女
王室公式SNSに投稿された国王ご一家の家族写真。(左から順に)アリアーネ王女、アマリア王女、アレクサンダー国王、マキシマ王妃、アレクシア王女
【独自写真】愛子さま、扇子を持ちながらキレキレのダンスを披露

 未来の王室を背負うアマリア王女にとって、支持率低下は大きな不安材料に違いない。

「オランダ王室のメンバーは18歳の成人に際して、伝記を出版するのが伝統です。アマリア王女の伝記には“まだ君主になる心の準備ができていない”という本音や、王政を廃止する可能性について“受け入れることができる”という見解が盛り込まれていた。自由な環境で育てられたぶん、これから次期国王としての期待が強まっていくことに戸惑いがあるようです」(前出・現地ジャーナリスト)

 “将来の女王”の前途には暗雲が立ち込めている。


水島治郎 千葉大学法政経学部教授。オランダ政治史を専門とし、『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か』など著書多数

倉田直子 オランダ在住ライター。2004年に映画ライターとして活動開始。2008年の海外移住を機に海外情報を発信するライターに転身