ウクライナのように、中国が台湾に、そして日本に侵攻するのか
実際にどの程度、差し迫った危機にあるのだろうか。
「アメリカの調査会社『ユーラシア・グループ』は'22年に続き、今年も台湾有事を“リスクもどき”に分類しました。将来的に事情が変わればともかく、現状で中国が台湾を武力で侵略する可能性は極めて低いと分析しています」
と、前出・飯島教授。前田さんもこう続ける。
「起こりえないと思います。台湾のような島を武力制圧するのは、軍事作戦的に極めて難しいからです。それよりも中国の傾向から見て、ジワジワと圧力を加えながら、時間をかけて民心を掌握していく方法をとるでしょう」
日本と連動するかのように、アメリカも中国への警戒心を高めている。
「とりわけバイデン政権になってからは、その傾向が顕著です。昨年11月に発表された日米共同声明には“岸田総理は日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領はこれを強く支持した”とあります。対中国を念頭に、アメリカから日本へ圧力を強めている様子が読み取れます。
日本列島は中国を取り囲むように連なり、日米安保条約に基づく米軍基地も点在しています。アメリカとしては、日本を盾にすると中国に軍事的な威圧感を与えるのに都合がいい、と考えているのでしょう」(前田さん、以下同)
日米の軍事的な協力がますます強化されている
日米が軍事的に一体化する動きは近年、強化されてきた。
「現在、沖縄に駐留している陸上自衛隊の第15旅団を、より規模の大きな師団に改変する計画があります。2000人ほど増員することになるため、新たな駐屯地を作らなければなりませんが、今でさえ基地被害が深刻な沖縄では実現不可能。
となると、米軍基地の中に自衛隊が入り、共同使用することになる。まさに日米が軍事的に一体化するわけです。地元との軋轢がさらに深まるのは必至でしょう」
安保3文書を受けてアジア周辺では緊張が高まっている。飯島教授は懸念を隠さない。
「中国、ロシア、北朝鮮は安保3文書を批判し、対抗措置をとると明言したり、軍事訓練を強化させたりしています。今の中国や北朝鮮の行動にも問題はありますが、それは外交で対応すべきこと。軍事力で対抗すれば、かえって脅威が煽られ、東アジアの軍事的緊張を高めかねません」
平和国家を謳う日本はどこへ向かうのか。その行方は、私たちの今後の選択にかかっている。