目次
Page 1
ー “妊夫”のパートナーの心情描写
Page 2
ー 晴れやかな気分になれる作品に

「実は私、妊娠しておりまして」

 1月5日から放送が始まった連続ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』(テレビ東京系)。斎藤工演じる桧山健太郎が、“男性妊夫”として奮闘する様子を描いたこの作品は、2022年4月にNetflixで配信され、今回、共同で制作を担ったテレビ東京が地上波で放送する運びとなった。

 男性妊娠する世界という攻めた設定や、斎藤工のお腹が膨らんだドラマのキービジュアルの異質さも相まって、配信開始時から大きな反響のあった同作。2012年に連載された坂井恵理氏による原作漫画の映像化に踏み切った理由について、プロデューサーを務めたテレビ東京の間宮由玲子さんに話を聞いた。

「結婚する人が周りに増えてくると、“まだ結婚しないの?”“子ども欲しくないの?”という質問が当然のように飛び交いますよね。人それぞれの考え方や価値観があるはずなのに、社会の一般的な価値観に巻き込まれてしまうことが多く、私自身、生きづらさを感じた経験があります。坂井先生の原作には、そういったいろんな人の持つ大小・種類さまざまなズレに気づかせてくれて、さらにそれらを肯定してくれる優しさがあり、すてきだなと思ってドラマ化の企画を立ち上げました」

“妊夫”のパートナーの心情描写

 おのおのが感じる生きづらさを暴く作品とのことだが、原作漫画とドラマを比較すると、さまざまな点で改変が施されていることがわかる。

「原作は1巻で完結しているので、連続ドラマ化するにあたってオリジナル部分の作り込みでかなり試行錯誤しました。ストーリーの枠組み自体も、原作は各話ごとにメインゲストが替わるオムニバス形式なのですが、ドラマでは桧山と、桧山のパートナーである亜季を主人公に据えて、妊娠から出産までを時系列に沿う構成に変えています。そうすることで、桧山自身の変化もそうですし、周辺人物や社会の変化も丁寧に描けると思いました」

 特に意識したのは、上野樹里演じる瀬戸亜季の心情描写だ。

「桧山の心境の変化に複雑に絡んでいる重要人物であることはもちろん、亜季自身が、現代社会の女性が置かれている立場に生きているのと同時に、桧山との関係性では、実社会の男性の心境や言動をトレースできます。どの立場にいる視聴者の方に対しても共感をもたらせるキャラクターになると感じ、2人をメインに据えています」