“恋愛ドラマの場合”に同じような演技が際立つ
「今みたいな演技が見られるようになったのは'10年に当時AKBの前田敦子さんと共演した『Q10』のころ。恋愛ドラマの主役を務めるようになり、相手役に翻弄されるパターンになってからよく“おちょぼ口、目線外し”が見受けられるようになりました。
ただこの時は、前田さんのロボット役のほうが話題だったので、佐藤さんの演技への違和感は話題になりませんでした。同年の大河ドラマ『龍馬伝』で龍馬の心優しい幼なじみ役を演じ、幅広い世代への認知が広がっていきます。『龍馬伝』で演出を担当していた大友啓史監督の信頼を得て、のちの『るろうに剣心』シリーズの出演につながっていったんです」
'12年公開の映画『るろうに剣心』は大ヒット。
普段は温厚な性格で、「ござる」が口癖のおっとりキャラだが、感情が荒ぶると人斬り時代の荒々しい性格があらわになる。二面性を持つ主人公・緋村剣心を熱演。
「ただ、剣心の日常モードのときはおちょぼ口演技が中心でした(笑)。この映画以降、恋愛ものから遠ざかっていましたが、'17年の映画『8年越しの花嫁』あたりから再び恋愛ストーリーを演じ始め、今のような指摘が増えたように思います」
'18年には『半分、青い。』(NHK)、『義母と娘のブルース』(TBS系)に出演。SNS上では、
「何やっても同じに見える、などの声が見受けられるようになりました。でも『半分、青い。』は主演の永野芽郁さん、脚本家の北川悦吏子さんのほうがたたかれていたのでそんなに目立たなかった」
最大の当たり役、'20年の『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)。ドS医師の天堂浬役を好演したが以降、この役のイメージが定着する。
「当たり役だっただけに、この後に演じたネットフリックス配信のドラマ『First Love 初恋』でも『100万回言えばよかった』でもヒロインを一途に思い続ける役柄ですが、相手への優しさが見えないという声も。佐藤さんの作品を改めて見返して感じたのは、恋愛ドラマの場合に同じような演技が際立っていますね。つまり佐藤さんは恋愛ドラマでのみ、その演技が話題になる役者ということ。それだけ当たり役に出会えたということだと思います」
『恋はつづくよどこまでも』の天堂のイメージが佐藤健から消えない限り、言われ続けるということか。
何を演じても佐藤健、というのは褒め言葉だというのはドラマウォッチャーの舞田稔さん。
「寡黙で無骨な役を演じることが多かった高倉健さんもかつては“何をやっても高倉健”と言われていました。吉永小百合さんも同じです。高倉さんも吉永さんも“あの人に傷をつけられない”という周囲が配慮した結果、同じような役が舞い込んだのだと思います。だって清純じゃない吉永さんを周囲は望みませんから」
と名優もかつてはそう呼ばれていたと話す。続けて、
「そういった意味では、佐藤健さんも歴史に名を残す役者さんになる可能性はあるかもしれません」
『100万回〜』では佐藤健演じる直木の身に何があったのか、いまだ明かされていない。視聴者を良い意味で裏切る演技に期待!