「覚悟はしていたけど、ついにこの時がきちゃったな、と。もしかしたら(中国から)シャンシャンのお婿さんがくるのではないかという淡い期待もあったんですけどね……」
シャンシャン激かわショット
こう語るのは、パンダライターの二木繁美さん。
上野動物園のジャイアントパンダ、香香(シャンシャン、メス、5歳)が2月21日に中国に返還される。
日本には13頭のパンダがいるが所有権は中国にあるため返還は避けられないという。
「パンダの繁殖可能な年齢はメスが4歳くらいから、オスが6歳くらいからといわれています。若い個体の返還は繁殖のためですが、日本生まれのパンダについては、ファンの方たちは“帰る”ではなく“旅立つ”と表現します」(二木さん、以下同)
2017年6月12日に生まれたシャンシャンをこれまで10回ほど取材を含めて観覧した。
「印象に残っているのは、室内展示場の小窓から飼育員さんがいるバックヤードのほうをじっと見て“圧”をかけている様子と竹をおいしそうに食べている姿です。
小窓を挟んで飼育員さんとエサなどのやりとりをすることはほかのパンダでも見かけるので、竹が気に入らなかったのかなと想像が膨らみました。
その後、取材で上野動物園では彼女がいちばん竹のえり好みをすることを知りました」
コロナ禍の影響で返還時期が何度か延長されていたが、シャンシャンが“旅立った”翌日の22日には、和歌山のアドベンチャーワールドの永明(オス、30歳)、桜浜(メス、8歳)と桃浜(メス、8歳)のふたごの姉妹も日本を離れる。
「永明さんは、人間でいえば90歳の高齢になるので(返還は)驚きました」
永明は1994年9月に中国から来園。同園で生まれた16頭の子どもの“グレートファーザー”だ。
「繁殖に多大な寄与をしたパンダです。ずっといてくれるのかなと思っていました。
8歳になるふたご姉妹は、発情期もきているので、お相手探しをするには個体が多い中国じゃないと難しい。旅立ちも近いとは思っていましたが、まさか永明さんも一緒とは想像できなかったです。
中国には老齢のパンダのための施設が充実しています。医療設備も整っていて、非公開の静かな環境で暮らすこともできます」
コロナ禍が落ち着いたという判断もあってパンダの返還が決まったが、同時期に4頭はファンでなくても寂しい。
「熱心なファンは中国まで足を運んで現地のファンと一緒に誕生日を祝ったりします。旅立つパンダたちには、現地でも大事にしてもらって元気に幸せでいてほしいと願うばかりです」