レモンを片手に笑顔を浮かべるタレント――。『週刊ザテレビジョン』でおなじみの表紙だ。'82年に創刊されて40年以上の歴史を持つ同誌は、3月10日号(3月1日発売)をもって休刊する。
出版元のKADOKAWAは、同誌が『月刊ザテレビジョン』と統合し、3月24日から新たな『月刊ザテレビジョン』としてリニューアル刊行すると発表。雑誌とWEB、それぞれの長所を活かして『ザテレビジョン』のブランドを強化するとしている。
『ジョン』が高い売り上げ部数を維持できた理由
日本雑誌協会が公表しているデータによると、2008年10月から12月の間の発行部数は642,317 部。それが2022年4月から6月にかけては、93,513 部へと減少していた。
元テレビ誌記者の男性は、テレビ雑誌が数多く名を連ねていた時代をこう振り返る。
「私がテレビ誌の仕事をしていたのは30年前ですが、当時は『週刊ザテレビジョン』『月刊ザテレビジョン』のほかにも『週刊TVガイド』『テレビブロス』『TV Taro』『TV LIFE』『テレビぴあ』『テレビステーション』『TeLePAL』『週刊テレビ番組』……ざっと数えても10誌くらいありました。どの雑誌も“テレビ○○”という名前で紛らわしいので、現場では“ガイド”“ライフ”と略して呼んでいて、テレビジョンは“ジョン”だった(笑)」
『ジョン』は、そんな中でも異質な存在だったという。
「記者は毎日、テレビ局の記者室に行って、いろんな情報を集めるのですが、“○日放送のゲストは誰ですか?”といった質問をテレビ局員に何度も聞いたら困るだろうから、この番組は『ガイド』が、この番組は『ライフ』がと、番組ごとに“担当制”にして情報を集めて、記者同士で共有していたんです。
だから記者同士の仲がよくて、ライバル心はそんなになかったんだけど、『ジョン』の記者だけは、少しでも他誌とは違う情報を集めようとしていました。だからこそ、高い売上部数を誇っていたんだと思います。
そんな雑誌が休刊というのは感慨深いけど、よくこの時世まで週刊というサイクルで続けてこれたよな、と。僕が仕事をしていた雑誌は25年以上前に休刊しちゃいましたし、『ジョン』にもお疲れ様でしたと言いたいです」(同・元テレビ誌記者)
業界でも一目置かれていた『ジョン』。休刊について、コラムニストのペリー荻野さんはこう分析する。
「近年は“テレビ離れ”が続いており、週刊というサイクルでテレビ誌を読む人が減って、販売部数が厳しくなってきたのが大きな理由でしょう。若者にとってテレビの情報が欲しいかというのが根本的なところ。テレビ誌には番組表があって、いろいろな番組の情報を知るためのもので、テレビを見ない人にとっては、ほぼいらないものだったりします」