消費者からの問い合わせについて各社に聞いた
とはいえ、一連の問題で不安を覚える消費者も少なくないようで、次のような声も。
《こういうのあってから回転寿司行けなくなった…生理的嫌悪と言うか気持ち悪いと言うか》
そこで、被害の有無にかかわらず寿司チェーン大手に、迷惑行為問題による対応の変化を問い合わせたところ、7社から回答があった。
回答の詳細は次ページ「主な大手寿司チェーン店の対応」のページに記載しているが、コロナ禍においての運営変更はあるものの、損害を受けていない寿司店は今のところ大きな変更はない。
一方、被害に遭った『スシロー』では“レーンでは注文品のみの提供”“卓上の食器や調味料は希望に応じて交換”などの対応が取られ、『くら寿司』、『すし銚子丸』でも次ページに記載したような対策をしている。
また、消費者からの問い合わせについて各社に聞くと、
《対策を公開しましたので、問い合わせよりも、励ましのお声をたくさんいただいております》(『すし銚子丸』)
《激励のメッセージを数件頂いております》(『がってん寿司』)
と、寿司チェーン店への応援ムードは確かなようだ。
しかし、いつどんな迷惑行為が行われ、拡散されるかわからない昨今。二度とこのような問題を起こさせないために消費者側にできることはあるのだろうか。
「最終的に自分たちが損をすることを、わかってもらうのが大事だと思います。迷惑行為をした方に悪意があることは間違いないですが、それがどういう結果をもたらすか、本質的に理解できていないのです」(東龍氏、以下同)
いったいどういうことか。
「回転寿司に限らず飲食業界全体の話ですが、消費者と店の信頼関係のもと、コストを抑えてやっていたのに、このような迷惑行為が発覚すると、“悪ふざけをする人がいるかもしれない”と、対策が必要になってしまいます。卓上に設置されたカトラリーや調味料を個包装のものにしたり、厳重な設備にしたり、従業員を増やしたり……。すると、コストが上がり、結果的に商品の値段が上がってしまいます」
また、日本の食文化全体への影響も考えられるという。
「回転寿司のようなユニークな業態ができなくなってしまう可能性もあるでしょう。さらに、迷惑行為により安心・安全が損なわれることで、日本で使うお金の20%は食に充てるともいわれている日本食好きによるインバウンド消費や、1兆円を超えている食品関連の輸出など、ポテンシャルがあるものをつぶしていくことにつながってしまいます」
東龍氏は、迷惑行為に対して次のように警鐘を鳴らす。
「値段が上がり、飲食店がつまらなくなり、日本のよいところが失われてしまうことになり、われわれ消費者も被害に遭った飲食店も、得をする人は誰もいないのです」
迷惑行為に及んだ若者たちは、今ごろどんな気持ちでいるのだろうか─。
東龍 グルメジャーナリスト ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆