【週末婚('99年)】“弱い女”に共感できない
こちらも内館牧子氏が手がけ、TBS系で放送された姉と妹のバトルを軸に展開する愛憎ドラマ。
「『想い出にかわるまで』と同じく、姉妹同士でぶつけ合う憎しみや嫉妬の感情の怖さが描かれた作品です。
姉の陽子(松下由樹)によって恋人と別れさせられた月子(永作博美)が、陽子の結婚式で、これまで姉がしてきた不倫などの行いをスピーチで暴露し“こういう女を、寂しがりやの弱い女っていうんですね。したがりやのずるい女っていうのかと思ってました”と締めて復讐する場面は、胸がすくのと同時に女の怖さをこれでもか!と突きつけてきて背すじがヒヤリとしました」
令和の今、このような姉妹の争いの物語は受けるのか。
「暴力は使わず、言葉で姉にリベンジする月子のキャラクター造形は、内館脚本ならではの面白さだと思います。ただ、ここまでの激しい姉妹バトルは今は共感されなそう」
一切の共感のない主役を10話も見続けられない?
【もう誰も愛さない('91年)】ショッキングすぎて見てられない
「バブル崩壊後、トレンディードラマが下火になってきたころに、『ジェットコースタードラマ』といわれるジャンルのドラマが生まれましたが、そのブームのきっかけになり、フジテレビ系『木曜劇場』枠で放送された作品ですね」
一度見逃すともうストーリーがわからなくなる展開ゆえ「ジェットコースター」と呼ばれる同作は、銀行の同僚小百合(田中美奈子)に妬まれ、陥れられる主人公・美幸(山口智子)と、小百合の手先になって美幸を陥れるも、美幸を愛してしまう卓也(吉田栄作)が、それぞれ犯罪を犯しながらも味方になったり敵になったりを繰り返すというヘビーなもの。
「初回から美幸が婚約者と妹の目の前で強姦されるシーンがあり視聴者を驚かせました。その後も、殺人を犯して刑務所から出所した後に女社長に成り上がる美幸に取り入ろうと足にかかった牛乳を這いつくばって舐める卓也、その卓也を高笑いしながら見下ろす美幸……。もう毎週胃もたれするようなショッキングな場面の連続でした」
視聴者どころかコンプラ的にも受け入れられないドラマだろう……。
ここまでの作品を並べて神無月さんは、
「'90年代のドラマすべてが、とは言わないけれど、恋愛ストーリーにドロドロと絡みつくような不幸やショッキングな展開が好まれた時代は確かにありました。
それはもうシンプルに、コンプライアンスが今よりもかなり緩かったのだと」
と当時の空気を分析。
「2008年のリーマン・ショックが起きるまで、世間も制作するテレビ業界にも、残酷な物語を“他人事”として受け止める空気があったのかもしれません。まだまだいろんなゆとりがあった時代だったのでしょう。
そして先シーズンのフジテレビ系『silent』のヒットが残酷さやドロドロとした展開がなくても面白いドラマは作れるとある意味証明したと思います。
恋愛ドラマはこれからもっと“良い時代”に向かうんじゃないでしょうか」